幕間 閃光の世界と暗黒の剣
ある町で、男が生まれた。
彼は厳しい父と優しい母の元で、不自由することなく育った。
その町から一歩出ると待ってるのは殺戮の世界、人の命は一切れのパンよりも軽い。
人は、人の幸福を欲しがるのだ。その世界は奪うことで成り立っていた。
――さぁみんな、やろうじゃないか。もう奪うことはない、誰も殺さなくていい、友になればこんなに楽しいんだ。こんなに。教えてあげようじゃないか世界中の人々に! みんな笑って過ごそう!
その男の友人の一人が声を上げた。皆で酒を飲み、火を囲んでいるその場で、友人は拳を突き上げそう叫んだ。
そして、男はその町に住む11人の友人と共に、世界を平和にするべく旅に出た。
長い旅だった。沢山の出会いがあった。沢山の別れがあった。彼らは一人、また一人と命を落としていった。
数年、数十年の旅路の果てに、彼らの旅は、終焉を迎えた。
彼らの旅によって、人々は剣を捨て、共に笑い、共に怒り、そして共に繁栄する。平和な世界がやってきたのだ。
――多くの犠牲の下に
その男は数十年ぶりに家に帰ってきた。懐かしい我が家。妻、息子。
――何もない。
彼らの生まれ故郷は、彼らがいたという理由で全て焼き払われていた。彼らの敵に、彼らを拒絶する人々に。
世界を救った彼らは、彼らの生まれ故郷を無くした。誓いを交わしたあの場所も、幼少期を過ごしたあの場所も、妻や子と歩いたあの場所も。
――何もない。
その男の友人の一人は、復讐をしよう、と言った。
その男の友人の一人は、もう戦いは終わったんだ、と言った。
そして、その男は――
――夢は叶い、道は創られる。それは光り輝く、閃光の世界。
――夢は壊れ、人は汚される。それを行うは、暗黒の剣。
数百、数千、数万、数億、彼らの剣は世界を作り、そして拒絶された。
――世界に拒絶された。
「来る、か。烏合である。烏合であるが……壮観である」
「市民はほとんど逃げちまいましたぜ? いいんですかい?」
「よい、捨て置くがいい。ふ……」
「そうですかい。ビッケルトはまだ暴れてるみたいですが、他には誰も呼べないのですかい? 結構、骨のあるやつもいますぜ」
「十分、世界は浸食された。あとは時間をかけるだけ……さぁ楽しもう。生き死にを。楽しもう……か。ふふふ……」
狂気の闇は国を覆う。暗黒の騎士は笑う。高き場所にて彼は笑う。
――幸せとは何だと思うね?
「我が幸せはこれである……ああ、心地よい」
そして、その男は、狂気に身を委ねた。
あの日旅立ったその男は、今ここにいた。




