幕間 白銀の剣
その光は神の光、その光は精霊の光、その光は人の光。
命を込めて剣を打つ。命を込めて剣を打つ。老人は剣を打つ。
一人の男は人を殺すために剣を握った。彼はただの人殺しだった。子供も、大人も、女も、男も、悪人も、善人も。その男は殺した。自分のために。ただ自分のために。
対峙した者は殺す。殺し続ける。
そしてついにその男は殺された。劇的なことはなく、ただ無意味に殺された。心臓を貫かれただの一突きで。
彼は死ぬ瞬間に思った。ああ、気持ちがいいと。彼は生きることから解放されたのだ。
老人は剣を打つ。
一人の男は守るために剣を握った。彼はただの守るために動く機械だった。友を、兄弟を、恋人を、家族を、知り合いを、他人を。その男はただただ不幸が見たくないために守り続けた。
人のために自分を殺す。殺し続ける。
そしてついにその男は殺された。劇的なことはなく、ただ無意味に殺された。守った人に殺された。
彼は死ぬ瞬間に思った。ああ、何だったんだろう自分の人生はと。彼の行為は一度の敗北で無となったのだ。
老人は剣を打つ。
一人の男は気に入らないものを変えるために剣を握った。彼はただ皆が、自分が、幸せになる場所のために剣を握った。
彼は殺した。そして支配していった。心をすり減らしながら、終わりを感じながら。
そしてついにその男は殺された。劇的なことはなく、ただ無意味に殺された。信頼していた民に殺された。
彼は死ぬ瞬間に思った。ああ、死ぬたくないと。彼は後悔のままに死んでいったのだ。
老人は剣を打つ。
結局は、そう結局は、人は殺し殺され、そして死ぬのだ。
老人は今まで沢山の剣を創った。その剣は今まで沢山の命を奪った。
自分の剣が自分の娘の命を奪ったとき、老人は後悔した。老人は嘆き悲しんだ。
剣は人を救う。剣は人を殺す。剣は人を導く。それは持ち手次第。そして持ち手は、選べない。
老人は自分の剣が人を殺すのではないと信じたかった。そして、創った。
持ち手を選べる剣を。
老人は生涯を懸けて剣を創った。一振りの剣を。白銀の剣を。
彼はその剣に死んだ娘の名を付けた。マリアと。
白銀の剣、マリアが人の手に持たれることを老人が見ることはできなかったが、その剣は今、ある男の手にある。
ジョシュア・ユリウス・セブティリアンという名の男の手にある。
白銀の剣は人を選ぶ。精霊の魂が埋め込まれたその剣は人を選ぶ。
その老人はデイレット・ラングルージュ。世界最高の剣を創った男。
白銀の剣――マリアは創られてから1000年と少しの間、今の持ち手を含めて二人しか持ち手はいなかった。
伝承ですらその姿を伝えきれていない伝説の剣。それが白銀の剣マリア。1000年の時を経てその剣は一体何を作り上げるのか。




