③ー1
ループ三周目にして最終ループ開始。
全編アリス視点です。
これまでのループに比べると短めで、毛色も違います。
どうやらお花畑の度合いが下がると話が短くなる模様。いいのか悪いのか。
学園の廊下を歩けば、さざ波のように聞こえる陰口。
「あら、ご覧になって。モニクス伯爵令嬢よ。登校している姿を見るようになって、もう半月になるかしら。確か彼女は、当主教育と結婚準備のために休学しているという話だったはずだけれど……本格的に復学なさったということ?」
「その教育を取り止めたのでしょう。学園での成績を考えれば、今から彼女に当主教育を叩き込もうだなんて、無謀というのも生ぬるい。まして前任のお姉様が優秀なリーゼロッテ先輩ですものねえ……そのお姉様を追い出してとなれば、要求されるレベルは天井知らずでしょうし? まあ、伯爵閣下に能力を評価されたからお姉様と交代したのではないことは、火を見るよりも明らかだけれど」
「つまりは、有能な婿探しに方向転換なさるのかしらね? クライトン家のフレッド様は、リーゼロッテ様のサポートをなさる予定だったそうだし。だからってクライトン様と婚約破棄というのもおかしな話だわ。お姉様の婚約者を寝取ったのだから、そこは淑女として最後まで責任を取るべきよ」
「あら。姉の婚約者を略奪する淑女だなんて、先生方に聞かれれば叱責されますわよ。矛盾にもほどがあると。ふふふふ」
と、ひそひそする声の中、どうにもいたたまれない私は急いで図書館に避難した。……紛れもない自業自得だし、何を言われても文句など言えないのは分かっている。
でも私は逃げない。逃げられないし逃げてはいけない。お姉様にしてしまったあらゆることへの償いとして、モニクス家を立て直さなければいけないのだ。かつてお姉様が全力をかけてやろうとしていて、けれど私のせいで挫折してしまったことを。
だから私は今、こうして学園にいる。どうにか我が家に婿入りしてくれる有能な男性を探すために。
「……とは言っても……どうすればいいのかしら」
図書館の閲覧スペースの隅でぽつりとつぶやき、ほうっと溜め息をつくしかできなかった。
三度目のやり直しで、私は初めてお姉様のもとへ向かうのではなく、フレッド様と一緒に王都に帰ることを選んだ。
その理由は、単純にリーゼロッテお姉様に合わせる顔がないのと、お姉様が私に望むだろうことを考えに考えた結果、「モニクス家次期当主として、破産に至る運命を変えること」という結論に達したから。
無論それは、言うほど簡単なものではない。正直なところ、私にできるとも思えないけれど……それでもやらなければならないことだった。それが今の私の義務であり目標であり、お姉様への贖罪でもあるのだから。
とは言えハードルは恐ろしく高い。
リーゼロッテお姉様からフレッド様を奪ったくせに別れたということで、私の評判は地の底を這っている。同級生のみならず学園中の生徒から陰口を叩かれるような状況で、伯爵家を立て直せるほどの男性を婿として迎えようとするなど、無謀と言うのも足りなすぎるくらいだ。
ならば私自身が努力して、伯爵家当主として必要なだけの力を身につければ……というのも夢物語でしかない。私の能力不足は当然あるにしても、現実的に考えて時間が足りないのだ。
これまでの人生からすると、モニクス家の財政状況は長くても二年で限界が来る。その短期間で私が付け焼き刃でも当主に相応しいレベルに到達できるかと言われれば限りなく怪しい上、恐らく二年が経つ前にお父様が痺れを切らして、私をどこかに嫁に出すと決める可能性が高い。そんなものはただの時間稼ぎでしかないのに。
今はこうして、婿探しのためにとどうにか説得して学園に通わせてもらってはいるけれど……お父様と顔を合わせるたびに、フレッド様との婚約破棄を責める気持ちと、婿はまだかと急かす思いを何の遠慮もなくぶつけられる日々で。
それは紛れもない自業自得だ。身にしみて理解しているし納得もしている。けれどそれでも、辛くないとは間違っても言えなくて……
「……八方塞がりって、こういうことを言うのね」
ずっしりとのしかかる見えない何かを改めて感じ肩を落とした。
図書館の隅にいる上、ただでさえ最悪の評判持ちであり暗い空気もまとっている私に声をかける物好きなどはいないから、存分に落ち込むことができる。このところはずっとそんな日々だ。無論そんなものは非生産的な時間でしかないと分かっている。
分かってはいるのだ。でも━━
そんな風に思っていたところに、予想外に話しかけてくる人物が現れた。
「やあ、久しぶりだねアリス嬢。君らしくもなく明らかに塞いでいるみたいだけど、噂通りに現実を思い知ったのかな?」
「懸念が一つ解決したのに全く容赦はしないんだな、ディオンは」
声音は朗らかなのに皮肉にまみれた内容と、窘めるというよりは素直な感想を述べた台詞。
どちらにせよ、ここでは━━図書館でという意味ではなく、学園内で聞くとは思いもしない二人の声だった。
「……ディオン様。それに……そちらは?」
「ああ、そうだね。正式に紹介しようか。シグルド様、彼女が例の、モニクス伯爵令嬢アリスです。アリス嬢、こちらはフォルテス公爵家のご長男シグルド様だよ。僕らには二年先輩にあたるお方だ」
「初めまして、アリス嬢。君の姉上リーゼロッテ先輩には、昨年まではとてもお世話になっていたんだ」
お姉様と同じような長さと色━━黒に近いほど濃い赤毛のディオン様と並んでいることもあり、金髪がよりいっそう煌めいて見える筆頭貴族令息は、誰もが見とれる美貌に人当たりのいい笑みを浮かべながらも、その目は恐ろしく冷徹な光を宿していた。
「……は、初めまして。アリス・モニクスと申します。……フォルテス公爵ご子息におかれましては、こうしてお会いできて光栄です」
あまりのことに動揺して、どうにもぎこちない挨拶になってしまった。
学生に王族がいない現在の学園において、最も身分が高い生徒がこのシグルド卿だ。それだけでも動揺するには十分と言える。だが私の場合は別の理由もあった。
━━思い出すのは、二度目の人生の終わり。二十年あまりをかけて貯めたお金がようやく目標額に達し、その支払い先であるクロディーヌ様を探してたどりついた先は、他でもないフォルテス公爵邸だった。
ゆくゆくはフォルテス家の嫡男に嫁ぎ、そのまま公爵夫人となるクロディーヌ様。その彼女の未来の旦那様が、他でもないこのシグルド卿というわけで……
「うん? どうかしたのかな、アリス嬢。まるで珍獣でも見るような目を私に向けているが」
「え。あ、も、申し訳ありません!」
内心が目に出てしまっていたらしい。
いや、確かに失礼だったけれど、でもこればかりは仕方がない気がする。知った当時は気にする余裕もなかったが、あのクロディーヌ様と結婚する男性となると、かなりの強者でなければやっていけないだろうし。単純に年上だとか爵位が上という理由ではなく、主に性格的な意味で。
……そう言えば、ディオン様はクロディーヌ様の従兄だった。シグルド卿が彼と親しいからクロディーヌ様との婚約に繋がるのか、逆に先にクロディーヌ様を気に入ったからディオン様と親しくなったのか、どちらの流れかは知りようもないけれども。
そのディオン様は、何やら不思議そうに首を傾げて私を見ている。
「へえ、意外な反応だね、アリス嬢。君のことだからてっきり、リーゼ姉様と親しくしていたという情報を聞いたら、即座にシグルド様に媚を売るんだろうと思っていたんだけど。姉様からペンダントを奪った時みたいに」
……前言撤回。ここまで容赦ない攻撃をしてくるディオン様と親しくできるのなら、シグルド卿が強者であることを疑う方がおかしかった。
お姉様がモニクス家を離れる以前のディオン様は、それなりに親切にしてくれていたと思っていたが……どうやらそれは仮面でしかなかったようだ。
「……ペンダントの件は、ディオン様もご存知だったんですね」
「そりゃそうさ。あのペンダントは、我がサイストン家の紋章入りのものだからね。よりにもよって君があれを持っていた上に遠慮なく見せびらかしてもいたから、僕はこれまで婚約者探しに動き出せなかったわけだし」
仕事が忙しかったせいも間違いなくあるけどさ、とさらっと口にしながら、ディオン様はシグルド卿と並び私の正面に座った。
でも何故そんなことになるのか、私には意味が掴めない。
「……つまり、ディオン様の婚約者探しを、私が邪魔してしまっていたということですか?」
「そうだよ? だって君は曲がりなりにも年頃の令嬢で、サイストン家と直接的な繋がりは何もない。なのに、少し調べればサイストンの紋章入りと分かる装飾品を見せびらかしていて、更にその家には僕という、君と釣り合う年齢の独身男性がいる。さて、それだけの条件が揃えば、あのペンダントを堂々と持っていた君は、世間的には一体どう見られると思う?」
言われて想像してみた。……さあっと顔が青ざめる。
「…………ただ公表していないだけで、私はディオン様の婚約者のような存在に思われかねませんね」
「そういうこと。まあ君はデビュタント後、さほど間を置かずにフレッド・クライトン殿と婚約してくれたから、そういう誤解はされずに済んだけどね。僕は君に標的扱いされていないと確信もできたし、学園で君と会う時は安心して、ペンダントを取り返すことに専念できていたってわけだよ」
そういう目的があったから、私に何かと接触してきていたということか。……ちっとも気づかなかった。改めてつきつけられた自分の未熟さと、ディオン様への申し訳なさが頭と肩にずっしりのしかかる。
「……それは、すみませんでした。ただ私はもう、ペンダントは手放しましたし……たぶん、ウォルサル夫人経由でお姉様の手元に返されているかと」
「そうらしいね。リーゼ姉様とソリュード兄様と、ついでにクロディーヌからも手紙が来たよ。あ、クロディーヌっていうのは伯母様、ウォルサル夫人の娘で、リーゼ姉様と僕の従妹ね」
「ついで扱いをしたと知られたら、クロディーヌ嬢は激怒するんじゃないか?」
さりげなくシグルド卿が口を挟んできた。クロディーヌ様の話題になったから、と考えるのは深読みしすぎか。
それはそうと、どうにも気になることがある。……何故このお二人は、わざわざ私に声をかけてきただけでなく、椅子に座って長く話し込む体勢になっているのだろうか。ディオン様が恨み言を言いたいだけなら、すぐに立ち去ってもいい頃なのに。シグルド卿がいる理由は、図書館の一角とは言え男女が二人きりになるのは問題があるからということかもしれないけれど。
考えても正解は出せそうにないので素直に聞いてみると、ディオン様はこともなげに答えてくれた。
「簡単なことさ。君が一体何を目的として学園に復帰したのかを確認しておきたいんだよ。場合によっては、またリーゼ姉様に妙な被害が及ぶかもしれないからね」
「そ、そんな……! お姉様に被害を及ぼすなんて、私は望んでいません! ただ私は、モニクス家をどうにか立て直したくて……時間もありませんし、不可能に近いことは分かっていますけど、それでもやらなくてはいけませんから」
「へえ?」
「ほう。詳しく聞かせてくれるかな」
何やら興味ありげに身を乗り出してきたシグルド卿に促されるまま、私はモニクス家の経済状況が危険な状態にあり、その打開策として有能な婿探しをしなくてはいけないことを打ち明けた。とは言っても、どれほどの危険なのか具体的な数字は把握しきれていないため、ただ近い将来への切実な不安だけはあるという非常にあやふやな話しかできなかったが……それでもシグルド卿とディオン様には十分な情報だったらしい。
「なるほど。……ふふ、これはなかなか面白いことになりそうだな」
「シグルド様、本性が漏れ出ていますよ。まあそれはさておき、アリス嬢。君もようやく実情に気づき始めたのはいいとして、今後はどうするつもりなんだい? 穏当な手段をとるにしても、元凶を容赦なくスパッと切り捨てるにしても、どっちも違う大変さが待ち受けているけど。それによって婿の選択肢も変わるだろうし」
こともなげに言われたせいで、その意味がよく理解できなかった。
穏当な手段と、そうでない方法。……そんな風にまとめられてしまうほどシンプルなのだろうか。
「ええと……穏当なものと容赦ない方法とは、それぞれどんなものになるんでしょうか」
「まず、君が無意識に選んでいる前者の場合だと、婿には有能さに加えて、現当主のモニクス伯の口出しを許さないくらいの身分の高さが要求されるよね。モニクス家の実権は言うまでもなく伯爵にあって、その発言権を封じない限り財政再建なんて不可能だから」
「……はい。そういうことになるかと」
それくらいは私にも分かっていた。だからこそ、そのハードルの高さに悩んでいるのだ。
伯爵であるお父様がおとなしく従わざるを得ないとなれば、要は侯爵家以上の生まれで、優秀かつ嫡男ではない存在ということになる。……そんな都合のいい男性がいるとすれば、当然現在進行形で引っ張りだこになっているはずで……誇れる能力もなければ血筋にも不安がある、評判最悪の私が射止められる可能性は極めて低い。モニクス家の後継者という立場を考慮に入れたとしても、限りなくゼロに等しいことに何ら変わりはないだろう。
「ちなみに、ほぼ全ての条件に合致するお方は目の前にいらっしゃるけどね。唯一、嫡男という点だけはどうしようもないけど」
「ほほう。ディオンはアリス嬢に私を口説かせるつもりか?」
「まさか。単なる例示ですよ。シグルド様とフォルテス家全体を敵に回しかねない恐ろしい真似をするわけがないじゃありませんか」
さりげなく酷いことを言われた。言われても仕方がないし、私が求めるべき婿像を具現化すればほぼシグルド卿になるというのもまた紛れもない事実ではある。あえて言えば、最優先事項は能力なので容姿にこだわる必要はないというくらいか。
「それならいいが。もし肯定されたら、ロザンナに『ディオンに嫁ぐことだけは絶対に許さない』と宣言しなくてはいけなくなるところだったな。妹に大泣きされることはできれば避けたい」
「……大泣きは流石に大袈裟では? ロザンナ様が僕に向けているお気持ちは、単なる憧れの段階でしょう」
「大袈裟かもしれないが、『単なる憧れ』で片づけると後で大変な目に遭うぞ。同じ十四歳と言っても、妹のような存在であるクロディーヌ嬢と他人のロザンナを一緒に考えない方がいい」
「もともとひとくくりにしてはいませんけれどね。ロザンナ様もクロディーヌも聡明ではありますが、クロディーヌには可愛らしいところがあまりないと言いますか……」
「そうか? 可愛らしさの種類が違うだけだろう。クロディーヌ嬢の可愛らしさは、何かとこちらを威嚇してくる気の強い子猫だ」
「…………いずれ捕まえて存分に愛でたくなる、みたいなお顔をされても、正直困ります」
……何だかとてつもなく怖い会話が聞こえてくるが、理解したくないのでスルーしよう。
「あの、もう一つの『容赦ない方法』というのは、具体的には?」
「単純な話だよ。━━アリス嬢。君の父親、現モニクス伯爵を、当主不適格として放逐してしまえばいい」
言われたそれに、頭が真っ白になった。
━━何を言っているのだろう、目の前の同級生は。大切な家族の一人であるお父様を切り捨てるなんて話を、そんなに簡単に━━
固まってしまった私に向け、ディオン様は何ら変わりないにこやかな調子で続ける。
「それなら自動的に君はモニクス家の当主になれるし、結婚相手も有能以外の条件はほぼ不必要になって、ある程度好きに選べるようになる。その後の財政再建を妨げる獅子身中の虫もいない。情を別にすれば後腐れも何もない、いいことずくめの方法だよね?」
「━━っ、馬鹿なことを言わないでください! お父様は私の家族で、たった一人の父親なのに━━」
「静かに、アリス嬢。忘れているかもしれないが、ここは図書館だ」
冷静なシグルド卿の声と、口に指を当てる仕草は決して無視できない何かを宿していて。
そのせいで━━もしくはおかげで、私はどうにか声を抑えることができたが、怒りはまだまだ収まらず、欠片も動じていない公爵子息に向けて八つ当たりをしてしまう。
「でも、おかしいじゃありませんか……! 私がモニクス家の破産を止めようとしているのは、領民は勿論のこと、お姉様や両親といった家族のためでもあるからです。それなのに、お父様を排除するなんていう選択をするのは本末転倒でしかありません!」
「そうかな? 君は知らないかもしれないが、リーゼロッテ先輩はクライトン殿との結婚後は速やかにモニクス家の実権を握り、現伯爵を引退させて君をご両親ともども領地の隅で暮らさせることを考えていたはずだよ。ディオンや私に言わせれば甘いとしか思えないが、それは第三者だからこそ言えることだろうな。ともあれ、彼女が君たち家族を領地運営に関わらせないよう、ごく穏便に排除するつもりでいたのは変わらない。━━君の敬愛する姉上がそのつもりでいたなら、君だって同じように……姉上より多少過激な手段を取ってでも、元凶である親を切り捨てるべきだと思うよ。『家と領民のため』と『家族のため』が対立している現状からすれば、どちらを優先するかを必ず決めなくてはならないのだから」
そしてお姉様は前者を選んだ。貴族としても、リーゼロッテ・モニクス個人としても。だってお姉様にとっては、私とその両親は既に家族でも何でもなかったから。
理解はできる。けれど感情は納得しない。どうやってもできない。
「……私、は……そんなことはできません。私の家族はもう、お父様とお母様だけなのに……それを自分から切り捨てるなんて……」
お姉様がいない今、両親を排除すれば私は一人きりになってしまう。それが恐ろしくてたまらない。
これまで繰り返した人生では、結果的にそうなったこともあったのだから、恐れることはないのかもしれない。でも、私にはどうしようもなかった流れで家族と離れ離れになるのと、自分の意思で家族を強制的に切り離すことは全然違う話だ。━━やり直した一度目では、お父様の方が私を家から追放したこともあったけれど、あれは私が悪かったのだから仕方がないと思う。
何より、お父様の浪費は私のせいでもある。それが明確な事実である以上、責任を放棄して両親を追い出すというのは、何というか……気が咎めてしまうのだ。
そんな風に理由をあれこれ探す私を、ディオン様は肩をすくめつつ、シグルド卿は関心をなくしたように見るだけだった。
「だからどちらも確保するために、身分の高い婿を探す方を選ぶということだね。それなら是非頑張って、アリス・モニクス伯爵令嬢。とても困難な選択なのは間違いないし、恐らく目的を達成するはるか前に、君はどこかの富豪に嫁ぐことになりそうだけれど」
「両親に対する忠誠心は結構なことだが━━それをできればリーゼロッテ先輩にも、真っ当に向けてほしかったとは思うが。君が嫁ぐ際には、モニクス伯爵が少しでも娘の意思を聞き届けてくださることを陰ながら祈っておくよ。望みは薄いどころの話ではないだろうがね」
という言葉を残して立ち去った二人はそれ以後、学園で私に関わってくることは一切なかった。
そうして、孤軍奮闘せざるを得なくなった私は、何の成果も得られることなく数ヶ月が過ぎ━━案の定、他家への嫁入りを強制的に決められてしまった。
嫁ぎ先が前回と同じディント家というのは、ある意味で一安心だったけれど……
フェルダ邸に行くことなく、そのまま王都に直帰したアリス。リーゼロッテに合わせる顔がないからと選択した道ですが、概ね2周目と変わらない展開となっています。
ここまでは。




