「ようやくひと息」
6月10日
ようやくエマを連れて魔王城に戻って来ることが出来た。
しばらく日誌をつけていなかったので、遡って覚えている事象を書きつける必要があるだろう。
しかしこの前の日誌はひどい。日誌じゃなくて呪詛だろこれ。
完全に頭おかしくなってたな俺。
せっかく彼女を連れて帰れたのに、ひとりになりたいと言われ少し考える。
あの涙はどういう心情からなのか──
泣いてから離れたいなんて言われたら、さすがに不安だ。だが、だからこそ離れていた方がいいような気もする。
きっと、エマは気持ちを整理しているのだ。
そして本心を俺に悟られまいとしている。
せっかく共に生きることにしたんだ。腹を割って話してくれてもいいように思うが……あっちはあっちで色々複雑なのだろう。
今は少し、彼女が落ち着くのを待とう。
これから赤子を迎えるにあたって、もっと様々な準備が必要になるのだから。
分裂か……
エマ、俺の赤子を気に入ってくれるといいな。
表立っては言えないけど、俺だって不安なんだよ。
これから身体的負担が確実にあるのだから。
精神的負担ぐらいは、分担してくれてもいいんじゃないか?
我儘なのだろうか……
勝手に産むくせに、って思われてたらどうしよう。
嗚呼不安。
魔王の日記編はこれで終わりです。
次回から勇者と魔王の育児と日常編をお送りします。




