風鈴がある屋敷
なろうラジオ大賞参加作品第八弾。
チリンチリンと音がする。
僕がいるこの屋敷に設置されてる風鈴の音。
誰かの来訪を知らせる音だ。
『こんばんは』
僕が相手を捜す前に、相手が僕に声をかける。
声が聞こえたのは背後だから、すぐ振り返る。
月を背に立つ誰かが、目をまん丸にして僕を見下ろしてた。
僕は相手の名前を知らないけど、いつも僕に会いに来てくれる誰かだ。
「こんばんは! 今夜は月が綺麗だね!」
『フフ、それは告白の言葉だよ』
相手の隣から、また別の誰かが現れた。
僕に最初に声をかけた誰かより、少し背が低い誰かだ。
『それはそうと、君……外に出てみないかい?』
その背が少し低い誰かが僕にそんな事を言ってきた。
『こんな所にいてはつまらないだろう。どうだい? 君にその気があるのなら……私達は君に外の世界を見せてあげるよ?』
「えっ!? 外に出ていいの!?」
『いいとも』
最初に声をかけた誰かが答えた。
『君はここに居続けるべきじゃない』
そう言われると、僕はだんだんウキウキしてきた。
ずっとずっと、僕はこの屋敷から出られていないから。
外の世界を一度も見た事がないから。
「じゃあ、外に出たい!」
そして僕がそう答えた時だった。
ブチブチッ、と何かがちぎれる音と、チリリリリッ、と風鈴が連続して鳴る音が聞こえて――。
最初にあの子を見かけた時。
なんて可哀想な子なんだろうと思った。
人族は弱い。
そして弱いからこそ。
自分達と違うものを避けようとする。
閉鎖的なこの地域ではなおさらそうだ。
そして、私達の前にいるこの子――周囲に不幸をばらまく疫病神のような能力を持ってしまった子……どちらかといえば私たち寄りの存在もまた、その被害者だ。
殺せば済む話かもしれないが、そうすると呪いが降りかかるかもしれないため、あの子の周囲には風鈴を使った結界が張られてた。この地域ならではの魔除け……というか封印の結界だ。でもその程度でこの子の能力を封じきれるワケがなく。
この集落はとっくの昔に壊滅してる。
なのにこの子は、何も悪い事をしてないこの子はまだ囚われてる……理不尽にもほどがある。というか私たち寄りの存在だからか、話す内に……私はいつしかこの子に同情どころか親近感が湧いた。
だからこそ、結界破りが得意な仲間に今夜は来てもらい……ついにこの子は解放された。
『じゃあまず、私達の村に行こう』
「わーい! 楽しみだなぁ!」
これから私達はどうなるかは分からない。
だけど助けた以上は、最後まで面倒を見るつもりだ。
作中の屋敷の中はウィンチェスター・ミステリー・ハウスみたいになってます。




