第9話
あれから本当にあの子達は来なくなった。
おかげで怯えて過ごすこともなく、平和に時間が過ぎていくけど……。
私は玲音からも友達を奪ってしまった。
そう、考えているのを玲音は双子テレパシーで気づいたのか、
「気にしなくていいよ。学園に行ったらまだいっぱいチャンスはあるんだから、ね?」
そう言って私に抱きつき、満面の笑みです。
しかし……、とまだ沈んだ顔をしていると、頬をつかまれた。
そしてみょーんっと横に引っ張られた。
「……え、えおん……?」
「悠華は気にしなくていいの!ね、僕には悠華がいるんだから気にしなくていいよ。」
ぱっと掴んでいた手を離してまた私に抱きついてきました。
……玲音よく私に抱きついてくるけど、これも甘えの一部かしら?
別の事を考え始めた私を見て、玲音は普段私には見せないような笑みを浮かべていたなんて、私には気づきませんでした。
あの子達が来なくなって幾日過ぎただろう。
私たちは毎日、講義を受けている。
午前中と、午後のティータイムの間まで。
これが、私たちの講義時間。
今日も変わらず講義を受け、終わり次第用意されたティーセットでお茶をする。
今日はダージリンのオレンジペコーに、うちの料理長お手製の薔薇のクッキー。
ふんわり香る優しい匂いに、やっと身体を休めることが出来る。
「悠華、今日は何する?」
「んー、……今日も書庫に行きたいな。」
「うん、そうしようか。」
私たちは四六時中一緒にいる。
そして、最近のマイブームは書庫巡り。
五十嵐家は[数付き]であるから、王族からあずけられている本もあれば、我が家特有の医療系専門の本まで、いろいろ。
そこで、私たちは新たな出会いをするんだけど、今の私たちには気づきもしない。
それは、この世界で生きるために必要な、とても大きな存在で。
これによって、大きくなった後の運命を左右するなんて、想像すらできなかった。




