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第九十七話

お久しぶりです。

 

「【アイス・アロー】」


 再び黄昏蜘蛛と相まみえた俺は、黄昏蜘蛛の動きを予測して魔術を放つ。


 想定通りの動きで木に飛び移ったところに、氷でできた矢をお見舞いした。


(やはり足りないな、次は…)


 アイス・アローはそこまで威力の高い魔術ではなく、一発で黄昏蜘蛛程度の生命力のあるモンスターを倒しきることはできない。


 だが、先程の戦い同様、動きはしっかり鈍らせたので、続けて氷でできた短槍を宙に生成する。


「【アイス・ランス】」


 アイス・アローよりもはるかに大きいサイズである氷の槍が、前よりは些か遅く、さりとてタイミングは完璧に、黄昏蜘蛛へと射出された。


「キッ」


 冷気を纏った一メートル以上の槍が、若干動きが鈍りつつも魔術に反応した黄昏蜘蛛の体躯を穿つ。


 反応したと言っても本当に僅かな動きであり、アイス・ランスは致命傷を負わせることに成功した。


(よし、上手くいったな)


 今回は少し威力を減衰させてアイス・ランスを叩き込んだため、木に縫い付けることなく黄昏蜘蛛は地面へと倒れ込み、僅かに足をばたつかせながら、最後の気力を絞って抵抗しようとする。


 一メートル以上の蜘蛛が足をばたつかせるのは、一般人にとっては脅威かもしれないが、既に探索者としてそこそこのレベルになっていた俺にとっては、それは意味をなさない。


「キィ」


「【アイス・アロー】」


 油断することなく俺はアイス・アローを発動し、氷の矢が止めとばかりに黄昏蜘蛛の頭を射貫いた。


 か細い声がさらに弱くなり痙攣を始めたのを確認し、俺は黄昏蜘蛛に近づき、刀で止めを刺す。


 すると黄昏蜘蛛は痙攣すらしなくなり、やがて完全に動きを止めた。


「やはり、このレベルのモンスターは相手になりませんね」


 東雲の言葉に俺は頷きつつ、振り返る。


「ある程度、経験も積んでるしな。スキルもあるし、このレベルのモンスターなら、直ぐに対応できるようになるだろ」


 これよりも、もう二段階ぐらい速くなられると、対処に手間取りそうだがな。


「あと、どれくらい狩りをしますか?」


 東雲の提案に顎に手を当てながら考える。


「う~ん、そうだな」


 そこまで苦戦はしないし、余力も十二分にあるが。


「一時間ぐらいでいいだろ。モンスターのレベルは問題ないが、この環境に慣れたわけではないからな。疲労がどの程度溜まるか予想できない」


 環境の変化による疲労の蓄積がどの程度のものか、まだ測れていないので、余力はあった方がいいだろう。


 レベルが上がり、体力なども向上し、肉体的な面ではかなり強靭にはなっているが、相対するモンスターも必然的にレベルアップしている。


 何年も探索者をやっていれば、疲労やモンスターの強さから引き際を見極められるのだろうが、生憎探索者歴半年程度の新人にそんなことができるはずもない。


 こればかりは時間が解決してくれるのを待つしかないだろう。


 俺は刀についた液体をそっとタオルで拭い、鞘に収める。


「じゃあ、適当に狩りをして終わりってことで」


 俺たちは黄昏蜘蛛から素材を剥ぎ取り、いつも通り淡々とダンジョンを探索するのであった。



読んでいただき、ありがとうございます。


明日、本作品のコミカライズ版が発売いたします。

私としてはただただ嬉しく、このような機会をいただいたことに感謝するばかりです。

そして、このような機会をいただいたのも、読者の皆様が本作品の一話、一話を読んでいただいたおかげです。

本当にありがとうございます。


読者の皆様方、これからもこの作品をよろしくお願いいたします。



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