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第九十三話 

獣型のモンスターが多く生息する→獣型のモンスターが比較的多く生息する(2024/11/14)

 

 あの後、俺たちは三体ほどゴブリンを倒し、ダンジョンを後にした。


 帰路に着く中、ダンジョンという特殊な空間にいた疲労感があったのか、俺の足取りは若干遅い。


(旅行初日というのもあるかもな)


 ここまでの移動は久しぶりだったし、真新しい環境はそれだけでストレスになる。


「そば美味しいですね」


 探索を終えた後は、ホテルの近くにあった蕎麦屋で、ざるそばを啜っていた。


 今回は二週間もの泊まり込み(予定)なので、宿泊費を考慮して、あまり高価なものを食べることはできない。


(そば、美味いな)


 そばの香りとつるっとしたのどごしがたまらない。


 だいたいは探索後に米と肉を食べるのだが、麺類をもっと取ってもいいかもしれない。


「明日はどのダンジョンに行く予定なんだ?」


「長野第五ダンジョンにしようと思っています」


 長野第五ダンジョンは最も近場のダンジョンであり、獣型のモンスターが比較的多く生息する、中規模のダンジョンだ。


 平均的な難易度は佐々木ダンジョンと同じくらいだが、第一階層の難易度は佐々木ダンジョンのものよりもだいぶ高い。


 その分、階層ごとのモンスターの強さが、いつも探索に使っている佐々木ダンジョンよりも緩やかに上昇するので、DランクやCランク、経験の浅いBランクの探索者に好まれているダンジョンである。


 他にも少し離れたところに軽井沢ダンジョンというのもあるのだが、そこよりも近場の長野第五ダンジョンの方がモンスターの強さを鑑みても、適切ではあった。


「それで、明日の探索なんだが、俺は基本的に遠距離の攻撃をしようと思うんだ」


 今日、長谷部ダンジョンの中で考えていたことを言う。


 俺は元々、遠距離の攻撃が得意だし、近い間合いで戦うことも鍛えた今、できなくはないが、それよりも臨機応変に戦った方がスタイルに合っている気がする。


 必要とあらば、近接戦闘にシフトする。


 それぐらいがちょうどいい筈だと、俺は考えていた。


「伊藤さんがそう考えるんだったら、それでいいと思いますよ」


 東雲も特に異論はないらしい。


「そうか、ありがとう。トレーニング自体は別に止めるつもりはないから、そこはこれからも頼む」


 別にダンジョンの中で戦うのがあまり向いていないだけであり、トレーニングをしないわけではない。


 単純にこの戦い方が今の自分のベストではないから変えるだけだ。


「分かりました。これからも頑張りましょう」


『 がんばる 』


 笑顔で答える東雲と、無表情のまま紙に文字を書き、何度も頷くヴァル。


(よかった)


 意見が通って、ホッとする。


 俺の中でもなかなか消化しきれずにいた問題だったからな。


 差というものはずっと感じていたが、ここ最近はこの二人に並び立つことを理想にしていた。


(別に同じ分野で同じ領域に行く必要はないんだよな)


 俺ではこの二人のいる領域にはいつまで経ってもいけないのは、最初から分かっていた。


 魔術があればなんとかなるという願望も混じっていたが、そう甘くはない。


(ただ、魔術ではこの二人に絶対負けない)


 既に魔力は大幅に増え、その分、使える魔術の幅は大きく広がっている。


 そろそろ魔術を極めていくのに時間を使うべきだろう。


「じゃあ、そばを食ったら、ホテルで休むか」


 今日はそこまで疲れなかったが、明日はそうはいかないだろう。


(久々に魔術を軸に戦うからな)


 俺は明日どう戦うのかを考えながら、そばを啜った。


読んでいただき、ありがとうございます。

本作のアクセス数が900万を突破いたしました。

皆様、本当にありがとうございます!

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