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第八十三話 

 

 現在、俺は第八階層にいる。


(そこそこ動けるな)


 第八階層の自動人形と戦っているが、自動人形の動きがそこまで悪くない。


 東雲やヴァルとは比べ物にならないほどの動きではあるが、素人のような動きではなかった。


(ただ、問題視するほどではないか)


 動きが少し洗練された程度なので、その先が読みやすく、攻撃は簡単に避けれるし、カウンターも決めれる。


(次の階層へ早く行こう)


 自動人形の首を掻っ切って、倒すと、第九階層へと続く階段を目指す。


 ある程度進んでいたこともあり、五分程度で見つかり、俺は第九階層へと踏み入れた。


(ふう)


 自動人形との戦いによる肉体的な疲労というよりも、ダンジョンという閉鎖された空間にずっといることによる精神的な疲労が蓄積される。


(仲間って大事なんだな)


 一人であれば、仲間がいる時よりも気を張る必要があるし、仲間との会話もない。


 精神的な負担は普段の何倍にも昇るだろう。


(一人でやるには慣れも必要かもな)


 ここ最近はずっと誰かと組んで探索を行っていた。


 もしも、俺がずっと一人でダンジョンを探索を行っていれば、これほどには疲れていなかっただろう。


(先へ進もう)


 俺は足取りを確かめながら、先へと進む。


 ここからは少しレベル上げを意識して、敵ともできる限り戦いながら進むことにする。


(いたか)


 第九階層を徘徊する自動人形がいた。


 ただ、心なしか最初の方の階層で見た自動人形よりも動きが滑らかに見える。


(実際そうなんだろう)


 俺はナイフを抜くと、構えを取る。


 そのタイミングで自動人形もこちらの存在に気づき、襲い掛かってきた。


「シッ」


 先手を取られそうになったが、直ぐに反応してナイフを振るい、自動人形に攻撃を仕掛ける。


 しっかりとしたダメージを与えられるように、深めに踏み込んで斬りつけたのだが、自動人形が若干の反応を見せ、ナイフはその体を浅く傷つけるにとどまった。


「ふっ」


 拳が飛んでくる。


 シンプルな右ストレートで、軌道も読みやすい。


 俺は上体を屈ませて、拳を上手く回避した。


(これで)


 俺は屈ませた弾みに、自動人形の左腿を切り裂く。


 そして、バックステップで距離を取った。


(よし)


 自動人形がこちらを追ってこようとしたが、俺が左腿をかなり傷つけたので、バランスを取りづらくなっている。


「終わりだ」


 動きに俊敏さが失われた自動人形に一瞬で近づくと、一突き。


 人であれば心臓があると思われる辺りを突くと、自動人形は動きを完全に止め、ダンジョンに取り込まれた。


(うん、第十階層は刀で戦おう)


 疲労感があるからか、倒すまでに三手もかかってしまった。


 試すように戦ったつもりがなくて、これでは、あまりよろしくない。


(ちょっと調子に乗り過ぎたかな)


 ナイフはそこまで練習していないのに、実戦で試そうとし過ぎたのかもしれない。


(この辺りのメンタルコントロールも一人では難しいな)


 仲間がいればこの辺りは何とかなったかもしれない。


(うん、まだまだだな)


 危ないほどではないが、ここに仲間はいないし、慎重に行こう。


 俺はナイフを仕舞うと、刀を抜き、軽く振るう。


「しっくりくるな」


 刀を鞘に納め、俺は第十階層へと続く階段を探すため、体をほぐすようにしながら、第九階層を歩いていくのであった。



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