第八十二話
第一階層はゆっくりと体を慣らすようにして探索していたが、それ以降の階層は急ぎで探索していた。
(身体能力が全然違うな)
俺は決して気は緩めることなく、ダンジョン内を軽く走って進んでいく。
途中で自動人形を見つけても一刀のもと、切り伏せてから探索を再開した。
そうしてダンジョンの奥へ進んでいくと、第二、第三階層、そして第四階層をあっさりと踏破することとなる。
(そりゃあ、弱いよな)
東京第二ダンジョンを初めて探索した時ですら、第二、第三階層の自動人形は弱かった。
当然ではあるがここまでの自動人形は、より強くなった状態の俺からしてみれば、第四階層の自動人形すら滅茶苦茶弱い。
(次は第五階層か)
俺は一旦スピードを緩め、第一階層の時よりも少し速いぐらい、早歩きぐらいのペースに落とす。
勿論、警戒は緩めていないが。
踏破のスピードを速めているだけで、命のやり取りをする以上、油断はない。
(お、いたいた)
それぞれの階層で必ず一体は倒しているので、今回も刀で切り伏せようと柄に手を添えたのだが。
(待てよ)
俺は刀の柄に手を添えたままの状態で、静止する。
少しの間の後、俺は刀から手を離し、サブウェポンのナイフを握り、鞘から抜いた。
(凄い)
買った時も良さげではあったが、握り心地がなかなかに良い。
重さといい、今の俺にちょうどいいものだ。
(一本十万もしたからかな)
耐久性やサイズの割に重さを求めたので、結構な額を支払った。
ちなみに刀は五十万もしており、かなりの出費である。
(金、稼がなきゃな)
金を使い過ぎたので、今日は第十階層まで行きたいところである。
そこで何個か自動人形の頭部を確保したい。
(来たか)
こちらが悠長に止まっていたので、自動人形が距離を詰めてきている。
(練習台になってもらおう)
第十階層に行けばもう少し強くなるのだろうが、この第五階層の自動人形は今までの階層の自動人形と体感的には大差ないだろう。
(よし)
俺はナイフを握りしめ、突き出すようにして構えを取る。
今までは先手必勝で、即殺をモットーにやっていたが、今回はナイフの感覚を確かめるために、あえて先手を譲る。
(来い)
自動人形があまり洗練されていない動きで殴りかかってきた。
俺はそれを躱し、ナイフで浅く斬りつける。
(問題なし)
浅い一撃だった筈だが、思ったよりも深く傷をつけている。
振った時の感覚も悪くなく、自動人形とコンタクトした時も変な感触はなかった。
(次は)
自動人形が自身のダメージをものともせずに突貫してくる。
俺は自動人形の攻撃をあっさりと避け、ナイフでその胸を刺してから、瞬時に引き抜く。
(全然大丈夫だな)
自動人形が消えゆくさまを見ながら、そう思う。
間合いの違いはあるので、若干の狂いはあるが、慣れれば修正可能だし、サブとしては問題ないだろう。
(第十階層までは、慣らしながら進むか)
この感じだと、第十階層までに自動人形が多少強くなっていても問題ない。
元々自分の強さの確認のためだったが、目標を修正して、ナイフの練習を行うことにする。
俺は軽くナイフを振って、最後に感覚を確かめると鞘に納めた。
(進みますか)
決して気は緩めず、しかし恐怖心を高めすぎないよう意識しながら、ダンジョンのさらに奥へと進むのであった。
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