第七話
本日二度目の更新です。
まだ前の話を読んでいない方はそちらの方を先にお読みください。
合計2週間ほどの鍛錬を終えた俺はとうとう、ダンジョンへと潜ることを決めた。
この前買ったジャージと刀、素材やアイテムを入れるためのリュックを準備して、近場のダンジョンへと足を運ぶ。
刀などを持って街中を歩いてよいのかとひと昔前までは言われていたそうであるが、かつてはあった銃刀法などは既になくなっている。
街中で大剣やダガーナイフ、拳銃などを身に着けた人間なんて普通にいるし、その行為に対して警察官は特に取り締まることはない。
刃物や銃器を持った人間が普通に歩いているのは一見危険に見えるが、何かしらの武器を持ち歩く場合には、アプリで行政に事前通達してブレスレット型の登録証を身に着ける義務があり、この登録証がないと十秒に一回は見ると言われる警備ロボに拘束されてしまう。
監視カメラもそこら中にあるため、よほどのことがない限りは警察を呼び出されるなんてことはない。
ここ辺りはダンジョンも近くにあるため、まず通報されることはない。
(武器を携帯できなきゃ、探索者として活動できないしな)
十五分ほど歩くと、最も近くにあるダンジョン、古びたビルのような外観をした【佐々木ダンジョン】に到着する。
ダンジョンの名称には地名や最初に攻略を行った人物の苗字や名がつけられる。
札幌ダンジョンは都市の名称だし、この佐々木ダンジョンは人物の苗字から取られた場合だ。
ちなみに最初に攻略を行うのは探索者協会が決めた人事によって行われることが決められている。
そのため、俺が未発見のダンジョンを勝手に攻略しても名前や苗字を取って、伊藤ダンジョンや晴彦ダンジョンなんて名称がつけられることはない。
(そう考えると少し夢がないな)
ダンジョンの中には様々な鉱物やモンスターが存在する。これらをうまく狩ることで一財産を築いた探索者は少なくない。
(利益が増えるほどに危険も増すが)
ハイリスクハイリターン、ローリスクローリターン、リスクが大きい分だけリターンも大きくなり、リスクが小さい分だけリターンも小さくなる。
探索者の死亡率は他の業種に比べると、やはり高い。
命を常に天秤に掛けて仕事をするので当たり前のことではあるが、常に危険が付きまとうことは忘れてはならない。
(とりあえずカードを通してっと)
ダンジョンに入るには事前に行政に申請を出した許可証がいる。
これは行政に申請を出せば特に何か条件があるわけでもなく、一週間ぐらいで郵送されるので、それを入場時に通せばダンジョンの敷地内に入ることができる。
(一回演習場に向かうか)
ダンジョンの隣には演習場も併設されており、探索者はそこで軽く体を動かしてからダンジョンへと向かうのが基本だ。
俺もリュックを下ろすと、腰に差していた刀を抜いて軽く振るう。
(思ったよりも体が引っ張られないな)
【魔術】がある以上、モンスター相手にはそこまで苦戦はしないだろうが、護身用に刀もある程度振れるようにしておこうと思っていたのだが、思ったよりも感触は良い。
普段から動かしていないとかなりなまってしまうはずなのだが、イメージよりもスムーズに体が動いた。
昔にやった体の動かし方を思い出しながら剣を振るう。
(下手すると昔よりもいいぐらいだな)
魔力放出のおかげなのか、身体の使い方がスムーズに行えており、刀に振り回されていない。
(これなら大丈夫そうだな)
そう思って刀を仕舞おうとすると、
「もしかして、無心一刀流の門下の人ですか」
横から十代ぐらいの少女の声がする。
周りで刀を振っていた人もいないので、恐らく俺に声を掛けたのだろう。
俺が声のした方に顔を向けると、高校生ぐらいのジャージを着たおかっぱの少女が真っ直ぐな曇りのない瞳でこちらを見ていた。
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