第六十六話
俺はリビングアーマーに斬りかかる。
「———」
リビングアーマーは盾を使って俺の攻撃を受け流すと、そのまま俺が刀を振るった力を利用して、こちらに大振りな両刃の剣を振るってくる。
俺はその一撃を刀で受けながら、衝撃を逃がしつつ何とか後ろへと距離を取った。
追撃は来ず警戒している為か、リビングアーマーもそこまで大胆には攻めてはこない。
これがそこまで知性のないモンスターであれば、怒りに身を任せてさっさと俺を殺しに来るだろうが、こいつはそんな短絡的な行動はとらないようである。
こちらを観察し、分析する知性を持っている。
(人外が知性を持っているってだけで、ここまで面倒だとは)
ミノタウロスの方が単純な強さは上かもしれないが、ミノタウロスに比べリビングアーマーは考える頭がある。
戦いの中で頭を使って望んでくる敵は厄介という他ない。
(どのように詰めていくかだな)
今回は練習ということもあり東雲とヴァルが他の敵を警戒してくれている。
そのため必然的に一対一である以上、他の敵を考えなくていいのは楽だ。
複数のモンスターに襲い掛かられるのは荷が重いどころではないので、正直助かっている。
(もう一度魔術を撃つしかないか)
多少読まれているだろうが、他に手がない。
俺はリビングアーマー目掛けて、その腹の辺りに魔弾を放つ。
リビングアーマーは素早い動作で盾を使って魔弾を防ぎ、すぐさま元の体勢に戻った。
(観察しているよな)
本能的に危機を察知して警戒されるのも困るが、どうやって俺を殺すかを戦術的に考えられているのが分かってしまうので、あまりいい気分にはならない。
向こうが何か手段を練っている以上、こちらも不用意な攻撃を行えず、常に何かしらの防衛策が必要になる。
防ぐか躱すか、距離を取るか。
そのどれかができない戦術を取ることができない。
戦いには勢いや流れも大事だとは思うが、戦いの中でも理性を失わないことが重要であることに改めて気づかされた。
(直での命のやり取りとなると本当に神経を擦り減らすな)
俺は頬を伝う汗すら拭うことすらできない状況に、戦慄していた。
一方的な攻撃がどれだけ楽だったかがよく分かるのだ。
距離というのがどれだけ自身の心を安定させていたのか、今更ながら理解させられる。
(考えて過ぎても仕方ないのかもな)
俺ができることなんて、刀を基礎に則った形で振るうことや魔術を使うぐらいで、他は何もできない。
戦術を練って相手を摘み取ることができればいいが、あいにく今の俺にはそんな高尚なことはできないようだ。
理性を失うつもりはないが、かと言って深読みも行き過ぎれば毒だ。
(そうと決まれば、やることはシンプルだな)
ようは刀でリビングアーマーを切り伏せればいいだけだ。
そこまでの道のりを作るだけでいい。
(やりますか)
心を奮い立たせ、牽制目的の魔弾を二発同時に撃ち込む。
狙いはリビングアーマーの頭と腹部。
殺傷性はそこまで高くないものの、リビングアーマーだって攻撃を黙って受ける筈がない。
だが、盾のサイズから、頭と腹部の両方を完全にカバーすることはできない。
(必然的に庇うのは頭となる)
予想通り、リビングアーマーは先程と同様に盾で頭を隠し、魔弾の攻撃を防いだ。
そして、元の体勢になった瞬間、距離を詰めながらバインドを発動し、リビングアーマーの身体を一時的に拘束する。
「!?」
直ぐに拘束は解けるが、別にそこまで長い時間拘束する必要はない。
俺はその一瞬を逃すことなく、リビングアーマーの首を刀で斬り飛ばしにかかるが、コイツの回復力は想像以上に高かったようだ。
(もう体勢を立て直しているのか)
しかし俺の一撃の方が速い。
勢いよく振るった刀から伝わってくる、斬った時特有の感触を感じながら、ドスっという音と冷たい衝撃が、俺の身体を走りぬけるのであった。
読んでいただき、ありがとうございます。
本来であれば、日曜日あたりに投稿しようと思っていたのですが、体調を崩してしまい、投稿日時が大幅に遅れてしまいました。
申し訳ございません。
それからこの作品の報告となりますが、総合評価5万ポイント超えを達成、ジャンル別四半期では二位にランクインいたしました。
ありがとうございます。
過去の記録ではございますが、ジャンル別で一位はもちろん、総合ランキングでも日間、週間、月間でもトップテンに入ることができました。
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