第六十二話
淵田さんが奥の部屋に消えてから十五分ほどが経過すると、鑑定が終わったのか小走りでカウンターへと戻ってきた。
淵田さんの表情を見ると、心なしか少し興奮しているように見える。
「いくらぐらいになりそうですか?」
俺が少し疑問に思いながら聞くと、淵田さんは上ずった調子で鑑定結果を報告し始めた。
「魔核が二十三個で百六十一万円、逆鱗が十五個で四十五万円、合わせて合計二百六万円です」
にひゃくろくまんえん?
「え?」
今、二百六万円って言ったのか?
流石に聞き間違いだよな。
「嘘、いや冗談か?」
あまりにも高い金額に俺は素の口調で聞き返すが、淵田さんは首を横に振り真剣な表情で答えた。
「嘘でも冗談でもありません。事実です」
先程までドジを踏んでいた姿とは対照的な印象を受けるしっかりとした口調に、俺はようやく真実であることを理解した。
(そこまで高額になるのか)
確かにミニドラゴンはミノタウロスに匹敵する魔核が取れるから、かなり稼げたとは思っていたが、二百万を超えるとは思ってもみなかった。
それにワイバーンの素材も含めれば、更に額は跳ね上がるだろう。
(上にいけばいくほど探索者って儲かるんだな)
金のないFランク探索者なんかは雀の涙程度の額しか稼げず、探索者限定の無料で貸与される狭い部屋に住みながら極貧生活を送っている。
それに対して俺の稼ぎは一日でその探索者たちの一年間の収入よりも多くの額を稼いでいるだろう。
Cランク程度までランクを上げられれば、ほぼ勝ち組の世界だということを、俺は改めて実感した。
(上のランクは上のランクで費用が掛かるけどな)
他にも装備のグレードを上げたり、ポーション類もより必要になるかもしれず、出費はランクが上がるごとに増していく。
(それでも、探索者のランクは高い方がいいだろう)
社会的地位もそうだが、金はどれだけあっても困らない。
やはりCランク程度には上り詰めておくのが、理想ではあるように感じた。
(経験を積む分、より安全に探索ができるのかもしれないな)
「以上となりますが、金額分は伊藤様の銀行口座に振り込みましょうか?それとも、現金がよろしければ、そちらに致しますが」
そういえば、今は換金の最中だったな。
うっかり忘れていた。
「ああ、ありがとう。銀行振り込みで頼む」
現金なんて家に多少あるくらいで、ほとんどの支払いは電子決済で済ませている。
逆に現金で貰う方が困ってしまうぐらいなのが、今の社会の現状だ。
「またのご利用をお待ちしております、伊藤様・・・・頑張ってくださいね」
淵田さんはお辞儀をして頭を上げると、俺に向かってウインクをしてくる。
(破壊力が凄いな)
俺は淵田さんの破壊力抜群のウインクに心臓を射貫かれそうなりながら、なんとか平静を装いつつ買取場を後にするのであった。
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