第六十話
転移ポータルに到着した俺たちは、無事にダンジョンの外へと脱出することができた。
「やっと終わったのか」
俺は外の空気を味わいながら、ワイバーンとの戦いを振り返る。
正直、今までの中で一番ひやひやした戦いだった。
初めてヴァルと出会い戦ったあの時は、厳しい戦いではあったが、彼女のサイズが人間と同じだったため、圧力を感じにくかった。
だが、ワイバーンの大きさは今まで対峙したどのモンスターよりも圧倒的に大きく、対峙するだけでかなり神経を擦り減らしたような気がする。
(あの炎の球がヤバかったんだよな)
ミノタウロスの弓は割と魔術を使って防げそうな感じであったが、ワイバーンの攻撃は火力の高い一点集中型の攻撃から、広範囲に影響を及ばす攻撃もあり、こちらから攻める手段が割と限定されていた。
(『極光』か『神ノ雷杭』はどの道使うことになっていただろうな)
大技を使わないと勝てないと感じさせられたのは、ヴァルの時以来で、あの閉じ込められた状況に感謝しかない。
「お疲れ様です、伊藤さん」
「そっちも、お疲れ」
東雲と軽く言葉を交わす。
出会ってまだ一週間もたっていないが、俺としては長年共にダンジョン探索を行った仲間のように感じられた。
(それだけ、この二回の探索が濃かったということなんだろうけどな)
出会った後の出来事も印象に残りやすかった理由だろう。
(そういえば、あの四人組はどうしているのだろうか?)
割と親切だった四人組がいたが、今はどうしているのやら。
(それにしても、世界征服狙えるレベルって漠然とし過ぎて、一周周って恐怖を感じにくいんだよな)
東雲が所属している組織が類を見ないレベルの組織ではあるんだろうが、ホント、どんな組織なんだろうな。
陰謀論なんて今では聞き馴染みのある言葉だしな。
かなりの頻度でテレビでも見かけるし。
(まあ、そんなことよりも今回は収穫が大きかったな)
ドラゴンの赤ちゃんなんてものも手に入った。
売ったらかなりの金になるだろうが、売るルートを確保できないだろうし、何より人道的ではない。
それに俺のモンスターでもないから、そういったことを選択する権利もない。
(ミニドラゴンがたくさん狩れたのは良かったな)
俺の場合、ダンジョンに潜るメインの目的は二つ。
一つはレベル上げ、もう一つは金だ。
探索者として活動するのは楽しいが、レベル上げは自衛や今後探索者として大成するには必要だし、金は生活するために必須なので、重視せざるを得ない。
(今回の売却価格はいくらになるのやら)
あれだけの数のミニドラゴンを狩ったのだ。
逆鱗の鱗と魔核を合わせれば一匹でもそれなりの収入になるモンスターを十数匹、今日だけでだいぶ儲けたことは確かだろう。
「伊藤さん、また今度」
「おう、またな」
東雲はソフィを見られないようにするため、早めに別れる手はずとなっていた。
(ヴァルもかなりヤバいが、見ただけではその価値は分かんないしな)
現代ではロボット技術もそれなりに発達しており、様々なロボットが街を行き来している。
その最もなものが、警備ロボであり、金持ちは人間に似せたロボットを家政婦代わりに使ったりしており、一部の探索者なんかも金がある者は護衛代わりにロボットを使っているなんて話もある。
ヴァルの見た目は高性能なロボットにも見え、今の社会にうまく溶け込んでいた。
(さて、俺たちの方もさっさと素材を換金しますか)
本当に結果が楽しみだ。
こうして、俺とヴァルはしばし休息を取った後、いつも通り素材の換金を行うため、探索者協会の支店へと向かうのであった。
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