第五十四話
ミニドラゴン三体を無事討伐した俺たちは、次々とミニドラゴンたちを討伐することに成功する。
基本的には一体ずつ出てくるミニドラゴンであったが、時折二体、三体と複数で襲ってくるので厄介ではあったものの、慣れてきた今ではヴァルと二人で安全に狩りができるようになっていた。
ミニドラゴンの討伐数が十五を超え少し疲労感がでてきた辺りで、東雲さんがある提案をしてくる。
「せっかくこの層を探索するのであれば、アイテムを探してみませんか?」
(アイテムか)
アイテムとは、ダンジョンから出てくる、科学技術だけでは作ることが不可能であった物を指しており、魔導具やポーションなどの現代技術で作ることが可能なモノから、Sランク探索者が使っているとされる聖剣などのように劣化品すら作ることができないものまで、様々である。
ちなみにスキルオーブもアイテムの一種であり、これも作ることは不可能である。
「アイテム探しはダンジョン探索の醍醐味ですからね。伊藤さんは喜ぶと思ったのですが」
喜ぶ、まあ、確かにロマンはあるな。
ダンジョンを探索し、モンスターを倒してから、アイテムを発見して、それを持ち帰って財を成す。
理想のダンジョン探索ではあるな。
「だけど、第十一層で手に入るアイテムはそこまで高価ではなかったよな」
ダンジョンで発見されるアイテムにもある程度ランク付けがされており、最下級アイテムの一つ、六級のスキルオーブはだいたい七万円程度で買い取ってもらえる。
普通に考えれば、かなりの収入源になりそうだが、今まで一度も見つけていないことから分かるように、出現数も少ない上、他の探索者に取られている可能性もある。
一つ見つけたとしてもどの道、七万円程度にしかならず、そんなアイテムを狙って探索を行うよりかは、ミニドラゴンをたくさん倒して稼いだ方が効率は断然良い。
「はい、ですがたまにいいアイテムも手に入りますし、何もアイテム探しをメインにする必要はありません。ミニドラゴンを倒すついでにアイテムを探すぐらいの腹積もりの方がちょうどいいんじゃないでしょうか」
「それも悪くはないんだが」
ミニドラゴンを倒せばかなりの金になるからな。
正直、それで十分ではないかと思ってしまう。
「それに、ここでアイテムを手に入れてしまえば探索者協会が運営するショップで買う必要がありませんから、出費が浮きます」
それは一理あるんだよな。
ショップで買うアイテムは手間賃などもあるため、価格が割り増しされて売られているし、ポーションなどはダンジョン産の方が効果がいいらしい。
その分、ダンジョン産のポーションは高額で売られているので、なかなか手が出なかったのだが、ダンジョン内で手に入れてしまえば関係ないな。
スキルオーブなどを手に入れられれば、更に出費を浮かすことができる。
(そうだな)
つい、アイテム探しとなるとそれをメインに考えてしまっていたが、ついで程度の感覚で行うなら、問題ないだろう。
「よし、決まりだ・・・と言いたいところなんだが、恥ずかしながら、俺はアイテムがどこにあるのか知らないんだが、東雲は知っているのか?」
前にダンジョンの情報を調べた時には、アイテムに関する情報は重視していなかったので、スルーしてしまっていた。
俺がそう言うと、東雲さんは微笑みながら、アイテムのある場所について話し始める。
「分かりました。じゃあ、お教えしますね。アイテムなのですが、これは各層にある小部屋、もしくはそれに類似した空間の中にある宝箱の中にあります」
宝箱・・・ああ、思い出した。
そうだったな。
昔の人間であれば、RPGゲームかよってツッコむのかもしれないが、ダンジョンが常識になっている俺としては簡単にスルーしてしまっていた。
正直、昔に本を読んだ時にそんなことが書いてあったなぐらいで、ほぼ記憶の中からなくなっていた。
「小部屋自体そこまで数がないのですが、次の層への階段を優先せずに探索し続けていれば、いずれ見つけられるでしょう」
「質問なんだが、罠とかはないのか?確か、宝箱には即死級のトラップがあるとか」
俺がそう言うと、東雲さんはクスクスと笑う。
明らかに俺のことを小馬鹿にしているのだが、そんな笑う姿も見た目がいいからか、妙に様になっている。
(何かミスったか?)
「流石に即死級のトラップは、佐々木ダンジョンの第十一層レベルではありませんね。三十層辺りであれば、普通かもしれませんが」
そりゃそうか。
この程度の浅い階層にそんな大層な罠が仕掛けられているわけないよな。
「よし、じゃあミニドラゴンを狩りながら、小部屋があればそこを調べるって感じでいこう」
「分かりました。アイテムの中にはかなり有用なものもあるので、そういったものが手に入るといいですね」
俺は初めて行うアイテム探しに少し興奮しながら、第十一層の探索を再開するのであった。
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