第五十二話
見事ミニドラゴンを倒した俺は解体作業を進めていくことにした。
と言っても、プロがやるようなものではなく、魔核を取り出すのと高額で買い取ってもらえる部位を剥ぎ取るだけだ。
ミニドラゴンの魔核はその図体に比べて大きく、弓使いのミノタウロス並みのサイズがある上、このミニドラゴンには一枚だけ逆鱗と呼ばれている黄緑色の鱗があり、これはポーションなどの特殊な薬に使われるため、たった一枚で約三万円の価格で売れる。
(ここ辺りから金を稼ぎやすくなるんだよな)
ただ、稼げる分モンスターが強くなるうえ、第十層のミノタウロスを倒せるレベルにはなっておかなければこれからの探索では話にならない。
もしもスキルが突出しておらず、武器術などがそこまで達者でない場合は、特に地道なレベル上げが必須になってくる。
(才能のある探索者は別なんだろうが)
才能があれば有名なクランに入って、パワーレベリングを行うことで若いうちから高レベルに至ることができる。
金持ちがよくやる手法で、レベルの高い探索者に手伝ってもらうことで比較的簡単なレベル上げを行える方法だ。
「東雲はいつぐらいからダンジョンに潜っているんだ?」
日本で五十番目くらいに強いと豪語するぐらいだから、かなり小さい頃から潜っているのではなかろうか?
「そうですね、だいたい七歳くらいの頃からですね」
「え?」
「はじめは軽めのナイフを使って止めを刺すところから始まって、だんだんレベルが上がってきてモンスターと戦えるようになってからは一人で黙々と狩るように命令を受けていました」
(ヤバい。想像以上に重たい)
「当時の教官、師匠に当たる探索者がまたクズでして、幼い私を無理やりゴブリンと戦わせたり」
「ストップ、もういい。分かった」
東雲が探索者を嫌っている理由がなんとなくわかった気がする。
そりゃあ、そんな指導のされ方であれば、探索者そのものを嫌悪していてもおかしくない。
「それにしても、伊藤さんも普通に魔法を使うようになりましたよね」
「ああ、魔法。そうだな。ここのモンスターは強いし、魔法がなくちゃ厳しいからな」
ホントはこの辺りに探索者が少ないから使っているのだが。
この第十一層はミノタウロスを狩れるレベルの探索者しかいないため、そこそこのレベルの探索者しかおらず、必然的に人も少なくなる。
(正直、第六層辺りからは人が少なくなるという情報があったので、そこまでためらわずに使うのが基本になっていたというのもあるが)
ゴーレム戦の時も普通に魔術を使っていたしな。
(それにしても、なぜ魔法?)
俺が魔術というスキルを持っていることぐらい把握していそうだが。
(なにかしらの意図があるのだろう)
そう判断した俺は、とりあえず乗っかることにする。
不利益があるわけでもないし、ここはダンジョンで変に音が響く時があるからな。
普通の探索者に聞かれても、問題ないかもしれないが、もしもがある。
(世の中、物騒だしな)
「よし、今日はミニドラゴンをドンドン狩ろうか!」
ミニドラゴンの狩りは金になるし、俺とヴァルのレベルアップにも繋がる。
東雲には悪いが、その辺りは理解して着いてきているだろう。
(そもそもどのくらいのレベルか、俺には分からないしな)
「分かりました。ぜひ、お手伝いさせていただきますね」
「・・・」
東雲の了承も得られたし、ヴァルも頷いている。
(とりあえず、狩りまくるか)
俺は今回の探索の流れを決めると、ミニドラゴンを求めて探索を再開するのであった。
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