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第四話 鍛錬



 


 ファミレスで食事を終え帰宅すると、MPの最大値を上げる訓練を始めることにした。


 レベル1程度の魔力量など大したことはないが、実のところ俺のレベルは1ではなかった。


 俺の現在のレベルは10であり、最下級の魔法ぐらいなら撃てるぐらいのMPというものを持っている。


 入社した当初はレベル1であったが、入社後の三か月程度でレベルを10まで上昇させた。


 会社がレベル上げを支援しており、俺もその一環としてレベルを10まで上げたのである。


 もちろん、これには理由が存在する。


 目的としては、レベルの上昇による体力の増強、ダンジョンに対する理解を深めたり、探索者としての人材を発掘するために行われている。


 才能のあった同期は社の探索部(主にダンジョンで探索を行う部門)に配属されており、今も元気に探索者としてやっているのではなかろうか?


 また、レベルを10まで上げることで、会社はその社員の人数分、税金の減額を受けることができる。


 企業はこの制度を利用して新卒などの体力を強化したり、ダンジョンへの理解を深めて仕事に生かしていき、節税も行うのが今の会社の常識だ。


(おかげで体力はついたが、残業で身体は酷使されたがな)


 こういった経緯もあり、俺の魔力は普通の若者よりも数値が高い。


(と言っても、魔力は推測の数値でしかないが)


 レベルを測定する機械は存在するが、明確なステータス(筋力やHP、魔力など)を測る機械は存在しない。


 そもそもレベルの測定を行う機械自体も、ダンジョンの謎技術と科学の結晶、最先端の技術である。


 全国で僅か百か所程度にしか設置されておらず、気軽に測ることができるわけでもない。


(今回はそれに救われていると思うがな)


 もしもゲームの世界のような、様々な能力を数値化したステータスを見れる機械がそこかしこにあったら、定期的なレベル測定を行わないといけないだろうし、そんな世界は俺には不利だ。


 明確なステータスが浮き彫りとなってしまえば、希少スキルを保持している俺は間違いなく目をつけられてしまう。


 そんなことになってしまえば、不自由な生活を送ることになるだろう。


「とりあえず魔力の最大値でも上げていきますか」


 いい加減、鍛錬を始めることにしよう。


 インストールされた情報によれば魔力の最大値を上げるには、体内にある魔力を消費する必要がある。


 これだけならば、世の魔法使い、またはMPを消費するスキルを持っている者ならば簡単にMPの最大値を上げてしまうだろう。


 当然ながら、条件はこれだけじゃない。


 MPの最大値を上げるには()()()()()MPを連続して消費し続ける必要がある。


(これは流石に分からないだろうな)


 三時間以上使い続けられるスキルなんてものは聞いたことがない。


 世の中にはたくさんのスキルがあるが、ほとんどが一時的に超人的な能力を付与するものと、魔力の消費を伴わない代わりに能力が上がり幅はほぼないものに大別される。


 魔法系統のスキルであれば、せいぜい数秒程度で必要な魔力は体外に放出されるだろう。


 魔力を回復させるMP回復ポーションを使えば、半永久的に魔法は撃てるが、費用対効果が悪すぎる。


 もしも、三時間もぶっ続けで魔法を撃てるならば、一人で何万という軍隊だって相手にできるだろうが、残念ながらそんな人間は聞いたことがない。


 つまり、不可能ということだ。


 だが、


(魔術ならば、それができる)


 魔力放出という初歩中の初歩の魔術がある。


 この魔術はMPの回復スピードと消費スピードをほぼ同程度まで抑えることができる唯一の魔術であり、MPを上げたり、魔術の感覚を掴む練習に使われる。


 俺はゆっくりと微弱な魔力を放出していく。


 このレベルの魔力放出にはある程度の魔術の操作技術が必要なのだが、魔術関連のあらゆる知識をインストールされている俺にとっては造作もない。


(ただ、ものすごく暇だ)


 折角なので片手から魔力を出したり、両手から魔力を出したり、頭から、両足から、首から、などなどいろいろな場所から魔力を出してみたが、直ぐに飽きてしまう。


 あまりにも暇だった俺は、片手から魔力を放出しながら、もう片方の手でファミレスの帰りに本屋で買ったライトノベルを開く。


(久々のラノベだな)


 家もほとんど寝るか食事をするぐらいでしか使わないほどに忙しかったため、ラノベを買いに行こうとも思わないし、ネットでたまに見つけても読む時間がないと思ってスルーしていた。


 それをこうして読めているのは幸福なことなのだろう。


 こうして俺は、懐かしい興奮を味わいつつも魔力を上昇させる訓練をするという、まったりとした時間を過ごすのであった。







総合評価が100ptを超えました。

作者としても、正直驚いています。


いつもこの作品を読んでいただき、本当にありがとうございます。


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