第四十四話
あの後、酒を浴びるように飲んだり、肉や海老を食いまくって、そのまま酔った状態でふらふらになりながら意識を失った。
今起きたところなのだが、おかげで絶賛二日酔い中である。
(しんど)
流石にビール五缶は開けすぎたか。
元々酒は強い方ではない上に、運動した後はアルコールが回りやすいの忘れていた。
「あったま、いてえ~」
久々の二日酔いはキツイ。
普段はそこまで飲んでいないのに調子に乗りすぎた罰だろう。
とりあえず魔術で二日酔いを治すことにした。
(ふう、頭痛と吐き気が引いたな・・・それにしても、三十万も稼いだんだな)
そう、一日で三十万も稼いだのだ。
初心者と言っていい俺が、一日でここまで稼げるなんて思ってもみなかった。
普通はダンジョン探索の初心者が、一日で三十万なんて額を稼げるとは流石に思わないだろうし、そんな甘い考えで探索者を始めようとする者は探索者として道半ばで諦めてしまうのが関の山だろう。
二週間ほど前は収入よりも出費が上回って、実入りがほぼない状態で探索する羽目になると思っていたんだが、ここまで稼げるとは。
(いや、本当についている)
今回の探索の成果における、弓使いのミノタウロスの貢献は大きいが、ゴーレムの魔核でもだいぶ稼げた。
そのため、俺の場合は佐々木ダンジョンで安全に金を稼ぐことができるということになる。
何せゴーレムをとにかく倒しまくってしまえばいいのだ。
それだけで一日に二十万くらいは稼げるんじゃないか?
(魔術は本当に神スキルだな)
ゴーレムも本来は倒すのが困難なモンスターである。
身体が岩でできている上に、体格も大きい。
ミノタウロスよりもさらに鈍重であるが、低レベルの探索者が容易に倒せるかどうかと聞かれると、否と言わざるを得ない。
俺の場合は身体能力を魔術で強化してしまえば攻撃はそうそうもらわないし、魔術で遠距離から攻撃ができる。
(これがスキル優遇されたものが得られる世界なんだろうな)
才能のない者でも努力をすればある程度のレベルにまでは至れるが、大体は人並み以下程度の実力にしかならないだろう。
探索者は命を懸けていて、そのたった一個の命を守るためにも日々の訓練を怠らない者が多いだろうし、そういった努力する者たちにはスキル以外の才能がある者たちも当然のことながら含まれている。
才能のない者は実力で突き放され、多くの才能のある者たちが残る。
その中でもスキルに恵まれた者は遥か上の領域に辿り着き、それに恵まれない者のほとんどは才能が有ってもそこそこどまりで探索者として道を終えることになる。
何せ、上にいけばいくほどに才能とスキルのレベルも上がってくる。
レベルを上げるにはモンスターを倒さなければならないが、そのモンスターだってどんどん倒しづらくなっていく。
才能のない者のほとんどはDランク程度良くてもCランクで探索者として終わり、才能ある者はBランク程度には行けるがAランクに至るには人外であるモンスターに対抗できる強力なスキルが必須になってくる。
この世界は本当にシビアなのだ。
(今は少しだけマシだろうけどな)
今の日本は才能のある者だけでも失わないように、そういった者たちを支援する体制ができているし、才覚を持った者であれば、ほぼ確実に高位の探索者に至れるだろう。
(俺は恵まれてる、本当に)
スキルのおかげでここまでの強さを得ることができた。
(Sランクの探索者は俺のような恵まれたスキルを持った者たちなのかもな)
Aランクの情報は知ることができるのだが、Sランクという人外の中の人外の情報は割と少ない。
(触らぬ神に祟りなしってな)
あんまりこのことは考えない方がいいだろう。
今の俺ではAランクの探索者ですら敵わないしな。
Sランクなんて夢のまた夢だ。
(よし、シャワーでも浴びるか)
俺はグッと伸びをすると、シャワー室へと向かうのだった。
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