第四十話
こちらに向かって強烈な一撃がミノタウロスから浴びせられる。
ミノタウロスの剛腕から繰り出される斧の一撃は、俺が魔術によって張った結界を容易く切り裂いた。
(危な)
俺は直ぐ様、魔術で身体能力を強化すると、バックステップでミノタウロスから距離を取る。
「ヴァル!」
俺と入れ替わるようにして、ヴァルがミノタウロスの前に出てくると、合金でできた盾によって岩すら簡単に切り裂きそうな斧の一撃を防いだ。
激しい轟音と、金属と金属のぶつかり合う音が第十層に響き渡る。
(やはり、前の奴より強い)
ヴァル自身、ミノタウロスを倒したことでレベルは上がっているため、パワーは上がっているはずである。
そのため、腕力に定評のあるミノタウロスと打ち合っているということは、何もおかしくはない。
だが、ミノタウロスの様子が少しおかしかった。
(動きが速くないか)
このミノタウロスは先刻出会ったミノタウロスとは速さが違う気がした。
前のミノタウロスは少し鈍重でありあの時のヴァルであってもそれなりに戦えていたが、このミノタウロスには速さがある。
(そうか、斧の扱いが上手いのか)
あの筋肉量からは考えられない速さであるが、斧という高重量の武器を逆に利用することで、あれだけの速さを生み出しているのだろう。
(ヴァルの速度についていけるとは)
俺はミノタウロスの動きを少しでも悪くさせるため、バインドを発動させる。
『バインド』
魔力でできた蔦が無数に発生し、ミノタウロスの身体に巻き付こうとするが、ミノタウロスはバックステップで回避した。
そこにヴァルが剣を持って踏み込む。
ミノタウロスも斧で応戦した。
ヴァルの剣とミノタウロスの斧が交錯する。
ミノタウロスという人外が放った、とてつもない重量の一撃がヴァルをよろけさせた。
その隙を見逃さないとばかりに、すかさずミノタウロスは斧を振るったが、ヴァルは身体を上手くずらしながら盾を使い、その一撃を防いだ。
ヴァルがいなした斧が盾を滑り落ち、地面に激突する。
あまりの威力に地面が陥没し、衝撃音が周囲に響いた。
(威力がヤバいな)
あんな一撃を喰らったら、文字通り頭が粉々になるだろうな。
(チャンスだな)
俺はミノタウロスの隙を逃さず、ファイヤーボールを顔面に撃ち込んだ。
魔術によって生み出された炎がミノタウロスの顔を焼く。
『バインド』
その後、拘束するために直ぐ様バインドを発動し、ミノタウロスの四肢を絡めとった。
ミノタウロスが魔力の蔦によって動きを阻害され、身をよじる。
「いけ、ヴァル」
ヴァルは猛スピードでミノタウロスに突貫し、首を取らんと剣を振るう。
ヴァルの剣はミノタウロスの首肉を抉り取るが、そのタイミングでミノタウロスが魔力の蔦を引きちぎり、彼女目掛けて拳を振るいかけるが。
『雷撃』
その拳を振り落とす寸前、俺が放った雷撃の衝撃によってミノタウロスは身体を吹き飛ばされる。
(よし)
ヴァルの強力な一撃と、俺の魔術によってミノタウロスはピクリとも動かなくなるのであった。
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