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第三十五話

 

(とうとう第十層か)


 ゴーレムや銅鳥、鉄鎧海老に火纏大山椒魚など、苦戦を強いられてもおかしくない様々なモンスターが出てくる佐々木ダンジョンだが、このダンジョンが危険な領域とされるのは第十層からである。


 第十層で出てくるモンスターはミノタウロスという牛頭の巨漢だ。


 かなり危険なモンスターである。


 この佐々木ダンジョンでは第九層までは探索を行っても、第十層を行わない探索者も多い。


 それは兎に角、ミノタウロスが強いからだ。


 佐々木ダンジョンでの死亡者数の最も多いのもこの第十層で、ミノタウロスが危険であることが数字となって表れている。


 ミノタウロスは圧倒的な膂力に高い戦闘スキルを持っているのだが、この戦闘スキルというのは、俺らが持っているスキルではなく、戦う技術のことで、この技術がかなり洗練されているそうだ。


 普通に武道や武術を長年経験している人間並みの技量で、そこに人間など歯牙にもかけない膂力が加わるのだから、とんでもなく恐ろしい。


(その上、遠距離の攻撃手段を持っているかもしれないんだよな)


 ミノタウロスは斧の扱いに長けているが、斧と弓の二つの武器を使ってくる個体もいるらしい。


 しかもそのケースの個体とはそれなりの頻度で出会ってしまうらしい。


(厄介だよな)


 ダンジョンでは遠距離の攻撃手段が限られているので、近距離遠距離ともに十全に戦えるモンスターは厄介極まりないのだ。


 何せ、距離を空けていても攻撃が来るし、距離を詰めても攻撃が来る。


 逃げ場がない。


 斧と弓を持ったミノタウロスと戦いになれば、真っ向から相手をするしかなくなる。


(逃げの姿勢を取れば逆に狩られてしまうだろうな)


 背を向けた状態でミノタウロスに斧を投げつけられば、即死だろう。


 今の俺であってもミノタウロスに背を向けるなんてことをやってしまえば、本当に命が危ない。


(強化されたとしてもまだまだ人間の範疇を出ていないからな)


 レベルがなかった時代の人間に比べればある程度勝っているが、人間を辞めているほどの圧倒的なフィジカルは持っていない。


 まして比較対象がミノタウロス、身体の強度や身体能力を比べていい相手ではない。


(レベルが50を超えれば、いろいろ変わるんだろうが)


 レベルが50になれば、人間の領域から一歩踏み出すことになり、肉体の強度も跳ね上がるし、身体能力も人間離れしたものになる。


(とりあえず、慎重にいかないとな)


 ヴァルとの戦いで分かったことがある。


 俺も簡単に死ぬってことだ。


 スキルは最強クラスだが、その使い手はまだ人間にすぎない。


 死へと繋がる要因はそこら中に転がっているのだ。


(いた)


 探索を行うこと十五分、ようやくミノタウロスを見つけた。


 サイズはゴーレム程度だが、その身体の強さはどこを取っても桁が違う。


 ゴーレムが十体いてもミノタウロス一匹には勝てないだろう。


「まずは俺が魔術を撃とう」


 ヴァルも盾と剣を構え、いつでも突撃できるように態勢を整えている。


 俺は指先をミノタウロスに向けると、魔力を放出させる。


『雷撃』


 俺の手から放出された魔力が、一筋の光となってミノタウロス目掛けて突き進んでいく。


(直撃したな)


 俺が放った雷撃は見事ミノタウロスに直撃したが。


(ほぼダメージ無しか)


 ミノタウロスの身体から少し煙が上がっているが、そこまでダメージがあるようには見えない。


「ブモオオォオオォオオ――――――!?」


 俺に雷撃を当てられて怒り心頭なのか、轟くような咆哮を放つミノタウロス。


 眼球がギロリと俺の方を向き、ミノタウロスの身体が膨張する。


(バトルスタートか)


 ヴァルの時以来の冷たい緊張感を感じながら、俺は次の攻撃を模索するのであった。






読んでいただき、ありがとうございます。

総合評価も28000ptを超えました!ありがとうございます。

これからも執筆活動を続けていきますので、この作品をよろしくお願いいたします。

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