第三十一話
ヴァルがミズデッポウ・オオトカゲを倒したのだが、ダンジョンを探索していると当然のことながら再び相まみえることになる。
相変わらず舌を出して威嚇する、ミズデッポウ・オオトカゲ。
初見であり、そこまで強いスキルを持っていなければ脅威になり得たのだろうが、遭遇するのが二度目でありかつこの程度のモンスターなど既に歯牙にもかけない強さを持っている(と自分的には思っている)俺にはびびる要素がない。
『雷撃』
魔力が俺の指先に集中し、電気が迸り始めると一筋の雷となって、ミズデッポウ・オオトカゲに直撃した。
「派手だな」
轟音と共に見るも無残な黒焦げ状態となった、ミズデッポウ・オオトカゲ。
先程の威勢の良さはなんだったのか、必死の威嚇も虚しく俺が放った雷撃によってあっさりと倒されてしまった。
1トンの力を生み出す尾の攻撃も、肉を切り裂く鋭い牙も、焼かれてしまえば、何の意味にもならない。
(魔法が重視されているのが改めて理解できるな)
世界各国に魔法を専門にする特殊部隊がいるが、その存在がどれだけ恐ろしいかよくわかる。
全く装備を整えずに、通常の人間では手の届かない距離と範囲に死をまき散らすことができるのだ。
テロリストも魔法で無残な死を遂げたくないだろうし、そんな部隊に攻めてこられる可能性は極力排除しようとするだろう。
俺はあらためて焼け焦げたミズデッポウ・オオトカゲの亡骸を見た。
(この核を取り出すのは無理だな)
雷撃によって黒焦げになったため、ミズデッポウ・オオトカゲの身体全体がダメになっており、刀を使って中を見てみたのだが魔核も見事に破損していた。
俺は砕けた魔核を手に取ってみる。
(これは・・・完全にダメになってるな)
魔核は新しいエネルギー源として探索者協会を経由して各国が買い取っているのだが、破損した魔核はエネルギーを生み出す機能を失ってしまうため、価値がゼロになる。
当然のことながら、この状態では売り出すことはできない。
(正直、思ったよりも高威力だった)
よく使われる魔法に似たというか、魔法の派生形と推測される魔術に、たまたま雷撃というものがあって使ってみただけなのだが、これが存外高威力であった。
魔法よりも若干威力の劣る魔術でこれなのだから、魔法はもっと強力なのだろう。
(その分MP消費が多そうだけどな)
魔法と魔術の決定的な違いはそこだ。
魔術はMPの消費を抑える手段があるのに対し、魔法は一定のMPを必ず消費する。
俺は雷撃を一発撃ったぐらいじゃそこまでMPを消費していないが、魔法の使い手は結構なMPを消費してしまうだろう。
(どっちにしろ、遠距離の攻撃手段があるだけでも強力だけどな)
外では未だに武器として使える銃であるが、ダンジョン内ではあまりにも意味をなさない。
ダンジョン内での銃の使用は反則とみられるのか、銃がまともに作動しない。
そのためダンジョン内での銃器は価値が著しく低下する。
(さて、探索を進めるか)
俺はミズデッポウ・オオトカゲの亡骸を放置すると、ヴァルと共にダンジョンの更に奥へと進んでいくのだった。
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