第二十五話
現状で俺が使える最高の魔術、【極光】。
光を収斂させて相手にぶつける魔術で、高火力の魔術として有名なのだと。
(すげえな)
俺は光線が通った後を見る。
あまりの熱に地面が溶けかけていた。
「・・・・・・・・・・」
黒い自動人形の様子だが、半身が溶けてなくなっていた。
俺は全身を消し飛ばすようにして撃ったはずなのだが、僅かに避けられてしまったようだ。
(ああ、本気でやって良かった)
先程、負けるはずがないなんて思っていたが、実際の所そんなことは思っていなかった。
こんな化け物と直ぐに戦うなんて想定していないし、有り余る知識も俺が正しく使える保証はない。
あれは戦意を高めるための自己暗示のようなものだ。
こうでもしなければ、この戦いを制するために動くことができなかった。
「まだ、生きてるのか」
微かに動く、黒い自動人形。
半身を失ってなお動くとは、流石に俺も思っていなかった。
(このまま、倒してしまってもいいんだが)
折角なので、テイム、というかモンスターを配下にする魔術を使って、この黒い自動人形を配下にしてみようと思う。
だが、重要なことを忘れていた。
(MPはほぼないな)
MPがなければ魔術を使うことができない。
魔術というスキルはとても強力だが、MPがなければ何もできないという点が欠点であった。
「あっそういえば」
俺はリュックを降ろすと、中から350ミリリットルのペットボトルを取り出す。
中には赤い液体が入っており、【MPポーション】と、ラベルには書かれていた。
(これを使えばMPを回復できるが)
俺はその行動をためらってしまう。
このポーションはかなりいい値段がしている。
具体的な値段を言うと、これ一本で五万円もする。
ポーション液自体も高いのだが、このペットボトル容器も特殊な素材を使っているらしく、かなりの値段になってしまうらしい。
MPポーション二本で、俺が今使っている防弾・防刃機能のついたジャージを買うことができると考えると、いかに高額かが理解できると思う。
(だけど、ここで使わないのはないよな)
こんなレアなモンスターいつ出会えるか分からないし、このようにテイムできるチャンスが巡って来るとも限らない。
(よし、飲むか)
俺はペットボトルの蓋を開け、急いで飲む。
(まずいな)
味は青汁のえぐみを更に増したような味がする。
ハッキリ言って、飲めたものではない。
(どうにか飲めたな)
これが1リットルとかだったら、飲み切ることができなかっただろう。
(MPが回復した感じがするな)
MPは基本的に自然回復で元の量に戻すのだが、こういった手段を持っていないと、いざ敵に襲われてMPがありません、じゃあ死ぬしかなくなってしまう。
そうならないためにも、こういった回復手段は持っておいた方が良いとされる。
(とりあえず、テイムするための魔術をかけるか)
テイムのスキルは発動すると首輪が出てきて、それをモンスターにつけるそうなのだが、魔術の場合は違う。
指先に魔力を集中させ、黒い自動人形の額に紋様を描いていく。
(良かった、こいつはもう動けないみたいだな)
ここで反撃されてしまえば、倒してしまうしかなかったのだが、良かった。
俺は紋様を描き終えると、紋様が鈍く光り出し、やがて閃光が辺りを包む。
(これが初テイムか)
当分はモンスターをテイムするつもりはなかったんだが、今回のようなケースであれば普通にテイムしていこうと思う。
やがて光が収まると、そこには黒ではなく、純白に染まった自動人形が立っていた。
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