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第十七話 

 


 若い探索者グループが去って行ったあと、俺は第五層にある転移ポータルへと向かっていた。


 銅鳥との戦闘は東雲さんの威圧で回避させてもらい、すんなりと目的地へと到着する。


「転移ポータルかぁ」


 佐々木ダンジョンには第五階層ごとに、ダンジョンの外へと出ることができる転移ポータルという魔法陣の描かれた部屋がある。


 転移ポータルを使えばわざわざ来た道を戻ってダンジョンを戻る必要がなく、探索者にとっては非常に便利な部屋である。


 多くのダンジョンに存在しているが、中には転移ポータルがないダンジョンも存在しており、そのようなダンジョンは高難易度ダンジョンとして探索者協会から認定されていることが多く、今の俺には縁のない話だ。


(不思議な感覚だな)


 転移をする瞬間は身体が一瞬自分のものではなくなったような感じの後に、ふわっとした浮遊感を体感する。


 これは一瞬にして肉体を粒子レベルに分解して、ダンジョン外で再構築するとかしないとか、議論がされているそうだが、未だに確証となる論文はないらしい。


 のんびりと考え事をしているうちに景色が移り変わり、気づけば俺と東雲さんはダンジョンの外に立っていた。


「転移ポータルがそこら中にあれば、便利になるのにな」


 企業や研究所が血眼になって作りそうなものだが。


「便利なのかもしれませんが、ダンジョン内は実質的に異空間なので、現実世界にあまり影響を与えないそうなのですが、この世界同士で転移するのは様々な法則の崩壊を招くそうですよ」


 そりゃあ、開発なんてされないわけだ。


「本日はありがとうございました。クソナンパ野郎どもはいけ好かなかったですが、探索は楽しかったですよ」


 東雲さんが満面の笑みでそう言うが、それがかえって恐い。


「おっおう、そうか」


 アイツらというか、あの茶髪の若者は東雲さんにアピールするという目論見もあったのではないだろうか?


 無念だな、ドンマイ茶髪。


「連絡先を交換したいのですが」


 そう言って東雲さんはスマホ型の端末を取り出し、こちらに見せてくる。


「スマホ、持ってるんだ」


「はい、ブレスレット型のはあまり好かなくて」


 携帯情報端末の小型化が進んだ結果、現在の日本ではスマホ型はあまり主流ではなく、ブレスレット型の方が多い。


 特に若者にはそれが顕著で、ほとんどの若者はブレスレット型を使っているはずだ。


「じゃあ、交換するか」


 とりあえず連絡先を交換する。


 こんな若い女性と連絡先を交換するのはそこはかとなく犯罪臭がするが、大丈夫だろう。


「それじゃあ、俺は行くわ」


「また機会があればダンジョンを探索しましょう」


 俺は軽く手を振り、東雲さんと別れる。


(機会があれば、か)


 そんな機会来るのかねぇ。


 俺はそんなことを思いながら、佐々木ダンジョンを後にした。






読んでいただき、ありがとうございます。


日間総合ランキング(連載中)において、4位となっておりました。

ありがとうございます。

これからも投稿を続けていきますので、この作品をよろしくお願いいたします。



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