第十六話
「どうして、貴方たちが・・・・」
俺がそう言うと、演習場で特に俺を睨みつけていた茶髪の若者が肩をすくめて、呆れたように言葉を返してきた。
「どうしてって、オレたちもここで狩りをしていたからだが」
確かに、それもそうか。
戦いで頭に血が上って思考力が落ちていたのか、当たり前のことに気付けていなかったようだ。
「第一オレたちはDランクの探索者だ。アンタ見るからに素人だろ、剣捌きはなかなかだが、ここのモンスターの特徴も知らないようだしな」
特徴?
銅でできた鋭い牙を持つカモメ、ぐらいじゃないのか。
「基本的にはこのモンスター銅鳥はチームで狩りをする対象だ」
ここでタイミングよくもう一匹目の銅鳥が現れる。
「クワ―」
銅鳥は彼らの前に突っ込んでいく。
すると、盾を持った探索者が前に出て、銅鳥の攻撃を受け止めた。
その隙に三人が武器を使って銅鳥に攻撃を仕掛ける。
三人の攻撃が全てクリーンヒットした。
「クウェ!?」
血しぶきをあげて、地面に伏す銅鳥。
この間三秒ほど、たったの三秒で俺が苦戦した銅鳥が倒されたのだ。
(凄いな)
そう思う他ない。
四人が行った完璧な連携に俺は舌を巻きそうになった。
「まあ、こんなもんだな。今回は魔法スキルを使わない方法で倒して見せた。魔法スキルは持っている奴が少ないし、それを使ってあっさりと倒して見せてもオレの言いたいことがよく分からないだろうしな」
茶髪の若者が剣を振って血を払い、チラッと東雲さんの方を見た。
「見事だな(連携は)」
少し腹立たしいが、仕方ない。
事実、彼らの動きはまさにプロフェッショナルのそれであり、認めざるを得なかった。
「当たり前だ。もう一度言うがオレはDランク探索者、初心者とは違う」
こっちのことを初心者と決めつけているようだが、いいだろう。
事実だしな。
ここで下手に否定するぐらいならスルーした方がいいだろう。
「確かに、伊藤さんは探索者としての経験が浅いですが、実力は高いです」
東雲さんがグッと前に出て、茶髪の探索者を睨みつける。
彼は少したじろぐようにして一歩後ずさったが、直ぐに元の位置に戻って不遜な表情を作る。
「剣士としては三流から二流程度だが、探索者としては五流だ」
「そう言う貴方は探索者としては三流で、紳士として五流以下ですね」
なんか喧嘩が始まりそうだな。
「東雲さん、別に俺は大丈夫だから」
あの上司に比べればどうってことないし、第一に事実だしな。
所詮俺はまだ魔術という強力なスキルを持った駆け出し探索者に過ぎないってことなんだろう。
これを知ることができたのは俺にとって大きい筈だ。
(あのままだと、いつかやらかしそうだしな)
ダンジョンは命を懸ける仕事だ。
他の仕事でも命を懸けてやっているという人はいるかもしれないが、実際に命を天秤に掛けている人は少ないだろう。
「伊藤さん・・」
「まあ、そういうわけだ。精々ダンジョンの養分にならないよう、気をつけるんだな」
茶髪の若者が捨て台詞を吐いて、去っていく。
俺はそれを黙って見送ることしかできなかった。
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