第十五話
第五層に生息するモンスター、銅鳥との戦闘は想像していたものとは違っていた。
「クワー」
ダンジョン内の天井はそこまで高くなく広さも狭いので、機動力は通常よりもなくなっているだろう。
しかし、速さが今までのモンスターとは違っていた。
ただ単純に速い。
先程からカウンターで攻撃しているのだが、ほぼすべて躱されてしまう。
それがここまで苦戦を強いられるとは思わなかったが、他にも理由はある。
(牙がヤバいな)
今までは簡単に敵を斬り捨てていたこの刀であるが、肉食獣のように生えている銅鳥の牙には弾かれてしまっている。
鉄鎧海老の場合は刺すことで、殻が硬いという強みを下げることに成功した。
動きがゆっくりだったのもあっさりと倒せた理由だろう。
銅鳥は当てようとしても躱されるか、上手く攻撃が当たったと思っても寸でで牙によって弾かれるかしてしまうため、有効打が今のところ一切ない。
(素早いんだよ)
俺は接近してきた銅鳥の攻撃を躱しながらいつも通り斬り捨てようとするが、ひらりと躱されてしまう。
攻撃の速さはゴムバレットよりも速く、攻撃の危険度もレッドスライムよりも高い。
クビナガトカゲのように群れてはいないため複数の敵を意識する必要はないし、鉄鎧海老のように遠距離の攻撃手段もないので肉薄して一気に畳みかける必要もないが、純粋に厄介で、強い。
(最悪だな)
互いに距離を取った状態で睨み合う。
銅鳥の体長は七十センチほどで、普通のカモメよりもだいぶ大きい。
俺のレベルが高く、素の身体能力が高ければよかったのだろうが、今の俺にそんな能力はない。
(一か八か、賭けるか)
今までは安全圏での戦闘をしていた。
相手の攻撃が届かないように配慮しながら、自分の攻撃は確実に当てる。
躱したりしてしまえば、相手の攻撃は意味がないし、どんなに重い一撃もゼロにできる。
武器を活かした戦い方で、間合いを詰め過ぎないこの戦い方は基本的には問題ない。
むしろ推奨される戦い方だ。
(こんなに自分が動けるとは思ってなかったんだが、ここまでか)
命を大事にした戦い方はここで捨てなくてはならない。
(次にここに来るときは魔術で殺してやろう)
遠距離から一方的に叩いて殺す、これが最適解で理想だ。
だが、今回はまともに相手をしてやる。
(それしか方法がないんだけどな)
昔は無理強いされていたから発揮されなかったのかもしれないが、今は意外と剣のセンスがあったのではないかと思っている。
俺は頭の中を戦意で満たして、構えを取った。
(来るっ)
銅鳥がこちらに一気に詰め寄ってこようとした瞬間、突然銅鳥の体を炎が包んだ。
「なんだ、やっぱり弱いじゃないか」
俺が声のした方に目を向けると、そこには演習場で俺を睨みつけてきた若い探索者たちが佇んでいた。
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