第十四話
第四層に生息するモンスター、鉄鎧海老であるが、あの後第四層を抜けるまでに更に三匹も取れ、東雲さんと俺で二匹ずつということになった。
鉄鎧海老はまだ食べたことがないので、個人的には楽しみである。
ちなみに味であるが、市販によく出回っている岩石海老に近い味らしい。
というのも、この岩石海老は鉄鎧海老を品種改良して養殖したものらしく、そりゃあ味も近いよなと思う。
だが、岩石海老よりも弾力があり、甘みや旨味が強いらしい。
(よだれが出そうになるな)
昼食はゼリードリンクだったので、満腹感がないわけではないが、それでも少し物足りなさがある。
(次からはもっとたくさん食べ物を持って来ないとな)
予定では魔法を模した魔術を使った戦闘を行う予定であったが、刀を使った戦闘が想定よりも多かったため、エネルギーを多く消費してしまった。
今後も魔術が使いづらい状況が出てくるかもしれないし、思ったよりも長くダンジョンに潜ることが出てくると思うので、食事は多いに越したことはないだろう。
「第五層が稼げるんだよな」
俺たちが今突入した
佐々木ダンジョンでは第五層は初心者の稼ぎ場としてよく使われている。
第五層にいるモンスター、銅鳥から銅が採れるためだ。
カモメのような見た目をしている鳥なのだが、肉は食用として適さないが、体内に銅を生成する器官があり、そこから純度の高い銅が取れるのだ。
更にこのモンスターには鋭い肉食獣のような牙があり、これは銅でできている。
金になるモンスターなのだ。
(より上位に銀鳥、金鳥なんてモンスターもいるがこいつらはもっと手ごわい上に、より深い階層に潜らないと戦うことはできない)
昔は金属を鉱山などから採取していたそうだが、今は貴金属などもダンジョンで採るのが基本となっている。
そういうこともあり、ダンジョンは国の重要な資源として国家、ひいては探索者協会が管理している。
探索者協会は国際組織だが、日本にある探索者協会の実権は実質的には日本が握っている。
他国も同様で、人事権などを政府が握っていることに特に批判はしていない。
暗黙の了解となっているのだ。
「伊藤さん、この階層では狩りをするということでいいですか?」
「ああ、俺は久々だからあまり奥まで潜りたくないんだが、少しは稼いでおきたいしな」
迷惑をかけるが、と言うと東雲さんは首を横に振る。
「いえ、そんなことはありません。私としても伊藤さんとダンジョンに潜るのは楽しいですから」
嬉しいことを言ってくれるな。
「俺としては凄く助かってるからな。機会があれば、また一緒に探索してみたいぐらいだ」
っと、この台詞は流石にダメか。
いい年したおっさんが、若い女の子をダンジョンに誘う。
絵面だけでもアウトだ。
「それは私としても願ったりかなったりです」
そう微笑んでくれる東雲さんが眩しい。
何というのだろうか、彼女は凄く無垢に見える。
「と、とりあえず、銅鳥を狩ろうか」
俺はしどろもどろになりかけながら言うと、足早に第五層の奥へと進むのであった。
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