表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ありふれた薄幸メイドは、冷徹貧乏伯爵に愛でられる  作者: おうぎまちこ
魔術研究所で令嬢と対決編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/24

第18話 ドレスで伯爵を釣る





「テオドール様が、剣の守護者様を避ける理由って――?」


 わたしは、突然現れたオルガノさんに声をかけた。


「ふふふ、それは――」


 彼は、なんだかすごくもったいぶった言い回しをしてきた。


「それは――?」


 ごくりとわたしは唾を飲み込む――。


 オルガノさんは口を半開きにしたまま、話してくれない――。


「それは――」


 アーレス様と、剣の守護者様と女王陛下も、オルガノさんが話し出すのを待った。


 そうして、オルガノさんが口にしたのは――。



「さすがに、城では話せません!!!!」



「はい!?」


 わたしはオルガノさんの返答に拍子抜けしてしまった。

 そうして彼は、わたしに話しかけてくる。


「まあまあ、アリアさん。こういう時のテオドール様は、城の庭にある池のほとりの桟橋でたそがれていますから、ぜひ会いに行かれてください!!!」


「へ――?」


「良いからはやく――」


 そう言って。オルガノさんはぐいぐい、わたしの背中を押してきた。

 そうして、正面玄関から放り出される。


「坊ちゃんのところに、行ってらっしゃい!!!」


 そういわれて、わたしは庭にある池のほとりの桟橋に向かうことになった――。




※※※




 しばらく歩くと、オルガノさんが言った通り、中庭にある桟橋にテオドール様はもたれかかっていた。彼はぼんやりと池を眺めている。



「あの、テオドール様……」


 わたしが声をかけると、はっとした様子で彼はこちらを見てきた。


「ああ、アリアか……」


(やっぱり、テオドール様の中でわたしはマリアではなくアリアだわ……)


 そうして、少し寂しそうに彼は話し始める。

 

「お前は、剣の守護者と知り合いだったのだな……」


(やっぱり、テオドール様は剣の守護者様のことが嫌いなの?)


 わたしはテオドール様の隣に立つ。


「……その、アリアは剣の守護者のことを、どう思っている?」


 突然の予想外の質問が、彼の口から飛び出してきた。

 わたしはびっくりしてしまう。


「その、剣の守護者様はお兄ちゃんのお友達なんです……別になんとも思ってません」


(本当は、ずっと好きだったんだけど……)


 なんだか、そのことをテオドールに話すのは気が引けた。


(それに、なんだか最近は――)


 わたしは、テオドール様の綺麗な菫色の瞳に視線を奪われる。


(剣の守護者様よりも、テオドール様のことばかり考えてしまう……)


 わたしの視線に気づいたのか、彼はこちらを見た。


 そうしてぽつぽつと、彼はわたしに話を切り出した。



「私にはかつて、婚約者がいた――」



(え――?)


 なんだかわたしの胸に、ずんと重しが乗ったみたいな感覚が襲ってきた。


「彼女とは幼い頃からの政略結婚だったが、そこそこ仲は良かった。私も、将来彼女と添い遂げるのだろうと漠然と思っていた――」


 わたしと手を繋いだりする時に、涼し気な表情をしていたテオドール様のことを思い出した。


(なんだろう……胸が苦しい……テオドール様、婚約者の人と手を繋いだりしていたのかな……)



「だが、お前も知っているだろうが、私の父が他国へ武器や食料を横流ししていたことが判明して、辺境の地に飛ばされてしまった。そうしたところ、彼女と婚約破棄することになった」


(事件でテオドール様が失ったのは、家族だけじゃなくて、好きな人まで……)


 彼は話を続ける。


「彼女は私と婚約破棄になったことを悲しんでいた……私も悲しくて仕方なかった……私は彼女を少なからず想っていたから……ある時、彼女が剣の守護者と見合いをするという話を聞いた」


(テオドール様の元婚約者さんと、剣の守護者様がお見合い――)


 しかしながら、彼女と剣の守護者様の見合いがうまくいっていないのは明白だ――。


「彼女は本意ではないのではないか、いやいや見合いをさせられているんじゃないかと……私は彼女に一目会いたくて、彼女の屋敷をのぞきに行ったんだ――だが――」


 テオドール様の寂しそうな表情が、わたしの胸を苦しくさせる。


「庭で令嬢たちと会話をしていた彼女が言っていたんだ――」


「何を、ですか――?」


「『テオドールは暗くて嫌だったのよ、やっぱり剣の守護者様みたいに地位も名誉も、能力も全て持っている男性が良いわ。爵位の下がったテオドールには用はない』と――」


 テオドール様があまりにも寂しそうに話すから――。

 なんだか、わたしまで悲しくなってきてしまった。

 彼になんて声をかけて良いか分からない――。


「人と会うのが怖くなってしまって、結局城にもお前が一緒でやっと来れた始末だ――彼女の言うように、暗い人間でしかない――アリア――?」


 気づいたら、わたしはテオドール様の身体を抱きしめていた。


「テオドール様はテオドール様です。お父様が悪いことをしたとしても、お姉様が怖い人だったとしても、元・婚約者のかたからしたら暗い人に見えたのだとしても――わたしには、テオドール様はとても優しくて素敵な人に見えます――」


「アリア――」


 テオドール様の手がゆっくりと、わたしの肩に伸びる――。


 そうして、彼はわたしの身体を抱き寄せた――。


「お前は、彼女とは違うと、信じても良いだろうか――」


 私の胸のドキドキが強くなっていく――。


(人間嫌いになってしまったテオドール様……でもわたしは――)


「わたしは、主人であるテオドール様のことを裏切るような真似はいたしません」


「主人、か――」


 テオドール様がぽつりと呟く――。


「今はまだ、それで良い――」


「今、なんて仰いましたか?」


「聞こえていないなら、それで良い――」


 テオドール様が、わたしを抱き締める力が強くなる。


 そうしてしばらく、わたしはテオドール様に抱きしめられたまま過ごした。

 

 池の水が太陽の光を反射して、きらきらと輝いていて――。


 まるで、私たちの未来を祝福しているかのように、その時のわたしは思っていたのでした――。


 





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ