90回目 ガンフラップ
9年前くらいに書いてた5さいの女の子と獣人さんのお話です。
悪魔が跳梁跋扈する中世暗黒時代。
人々は悪魔に似せた機械仕掛けの神フォークスギアを従え、
日々かりそめの平和を維持しながら生活していた。
そんな世界でゆいいつ恒久の平和が続く約束の地、リムフェルシア。
そこにこの物語の主人公となるティティ(5さい)はいた。
約束の地には本物の神が存在し、他の悪魔をすべて退けていた。
神は教会が管理し、その神の心臓と呼ばれる存在を見ることができるのは
司祭を除いてはティティだけだった。
そう神の心臓と呼ばれる存在は、ティティの唯一の肉親である姉のエリアだったのだ。
エリアのそばに控えるリムフェルシア最強の騎士、獅子獣人のヴィオグラは
やたらと自分のたてがみに触れたがるティティを鬱陶しがりながらも、
半ば恋人のような関係のエリアの妹を、自身の妹のように大切にしていた。
そんなある日リムフェルシアの神を悪魔だと言って軍事帝国オルトグラードの侵攻が起きた。
連れ去られるエリア、なだれ込む悪魔と帝国兵の侵略で焼き尽くされていく故郷の中、
ティティは魔女の妹として刃を向けられた自分をかばい戦ったヴィオグラが、
兵士達の刃を受けて絶命するのを目の当たりにする。
ティティの体から虫のようにわき出る正体不明の化け物。
白昼夢のようにティティは悲しげな顔の青年の横顔を見る。
最後の化け物が針のような触手をヴィオグラに突き立て彼の死体を操り始める。
化け物達は帝国兵や悪魔を無差別に喰い殺し、空を漆黒に染めていった。
絶望に包まれる中、エリアが馬車の鉄格子の中で祈り始める。
彼女の祈りはその背中に白い羽を幾重に生み出し、
それは空へと届き世界を正常に癒していく。
「生きなさいティティ、お姉ちゃんは大丈夫。あなたに力を分けてあげるから」
赤ん坊のような姿で丸くなって眠るティティの上に白い羽がひとひら落ち、
化け物達が消えていく。
彼女が目覚めたとき姉は連れ去られすでに姿はなく目の前にあったのは見慣れたたてがみ、
ヴィオグラが彼女をおぶって見知らぬ荒野を歩いていた。
彼の話によると彼の命は彼の持つ肋骨や肉や皮のある呼吸までしてる不気味な魔剣によって繋がれているようだという。
そして魔剣には魔法の力があり、それはティティに危険が及んだときにだけ覚醒するのだという。
それから4年の歳月が過ぎた。
国の最強の騎士だったヴィオグラの手ほどきを受けたティティも、少女ながらに一人前の冒険者になっていた。
姉から譲り受けた一片の羽から小さな神を召喚する力を使いこなせるようにもなった彼女の行動は日増しにエスカレートしていた。
すべてはあの日生き別れた姉エリアを救うために。
この世界に存在する三つの国、その国には一人ずつ神の血を引く人間が存在していた。
リムフェルシアからさらわれた姉を捜し続けるティティ、彼女を止めようとするヴィオグラ。
「俺はあいつからお前を守るように頼まれた、お前の幸せが最優先なんだ」
「じゃあ邪魔しないで!私はお姉ちゃんを救えないのに幸せになんて絶対になれない」
「ったく頑固なとこだけは姉妹そろって男勝りなんだから、おい!まてよ!!」
旅を進めていくうちにどうも存在を世界に隠された禁断の第4の国が存在することがわかってくる。
神の存在しない国、闇の底にあるという帝国オルトグラード。伝説の中にしかないといわれていた世界にはびこる悪魔の元凶。
オルトグラードへ入るための闇の扉を探す二人に、
ヴィオグラと同じ悪魔の力を秘めた魔剣に命を繋がれた戦士達が現れる。
彼らと戦いながら二人の旅は続いていくのだった。




