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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
871/873

862回目 Dispatch Unit 07

ドワーフ、エルフ、コボルト、ゴブリンなどの亜人種の扱いが人間の社会で劣った者として虐げられている世界。


ドワーフは鍛治が得意で火に強く

エルフは体力は低いが長命種であるため魔法知識に長けて

コボルトは卓越した身体能力で戦闘に長け

ゴブリンは地霊との会話が可能ですばやく斥候や盗みが得意


残り物部隊として編成された第七派遣部隊

そのリーダー「アレックス」は人間でみんなから煙たがれる存在だった。


しかしなぜか彼はメンバーに対し辛抱強く優しい

そしてその指揮は癖の強いメンバーそれぞれの長所を生かし短所を補完する卓越した技術を見せる


実は彼はかつて捨て子で、放浪者達に拾われ育てられた過去を持っていた。

放浪者達は街に居場所のない亜人種で構成されていて、ちょうど第七派遣部隊のような環境だった。

それぞれがそれぞれの感情を人間であるアレックスに向けていたが、皆良き両親であり兄や姉だった。


第七派遣部隊でアレックスが完璧な指揮を出せる理由はその時の経験による知識によるもの。


放浪者達は最終的に敵国のスパイとして疑われ人間達によって殺されてしまい、アレックスは彼らを救えなかった自分を悔い、その償いのために第七派遣部隊を指揮する立場を選んだのだという。


その話を聞いてかすかによぎった罪悪感を否定するために「じゃああんたは俺たちを使ってオナニーしてるんだ」とメンバーの一人が痛烈に批判する。

その声に対してもアレックスは穏やかに微笑む。

「その通りだ、だからどれだけ憎んでくれてもいい」穏やかに彼はそう答える。

仲間達はそんな彼の姿を見て、石を投げられながら贖罪の旅をする罪人のような痛ましさを感じ、自分たちが亜人種を侮蔑する人間達のようにも思えて自己嫌悪した。


自己嫌悪を否定するためアレックスを極端に敵視して騒動を起こすものが出たりトラブルは起きたが、任務をこなす旅の中で彼らは次第に打ち解け、その戦果から重要な戦力として注目され始める。


しかしそんな中仲間達はアレックスのさらなる一面を知る。

彼はチームの誰よりも人間を憎悪していたのだ。


人間の国、人間の軍は第七派遣部隊を使い捨ての駒のように扱おうとする。

アレックスはそれを逆手に取り、亜人種による人間国の一斉襲撃を画策していた。

その結果訪れるのは人間国の人間全ての死滅。


アレックスは裏で敵国と繋がりがあった。

彼は仲間達に、人間達の支配から亜人種を解き放つためとして協力を求める。

それを語る彼の目には家族を皆殺しにされた少年の狂気の闇があった。


仲間達はアレックスの心を闇から救うために彼の作戦に協力する。

そして第七派遣部隊が任された関門防衛戦、ここで敵部隊を集めて通過させる手筈だった。


しかしそこに現れたのは敵の亜人種軍だけではなく、人間国で虐げられてきた亜人種の民兵達だった。


仲間達が声をかけ、国を守るために命を捨てようとしているアレックスのために立ち上がれと呼びかけ、それに応じた人々の姿だった。


アレックスの罪は既に償われ、人間国の亜人種にとって希望の光となっていたのだ。


人々は俺たちの英雄を守れ!と叫びながら迫る敵兵に対して傾れ込む。

戸惑うアレックスに民兵達はあなたと共に戦えるのは俺たちの誇りだ、どうか胸を張って前を向いてくださいと言われる。


仲間達は迷うアレックスに選択を迫る。

「どうする 英雄(ヒーロー)


アレックスは仲間達や民兵達のまっすぐな思いを受けて迷いを振り切り、鬨の声を上げる。

その声に応じる民兵と第七派遣部隊の猛攻にたじろぎ押された敵は撤退を選ぶ。


かくしてアレックスは決死戦をも第七部隊単騎での大勝で収めるという快挙を成し遂げ、その事実はセンセーショナルに国を沸かせ、国民達は国を守る為死力を尽くした亜人達を讃えて、彼らを隣人として受け入れるようになっていった。


第七部隊の権力が強くなりすぎたため部隊は解散されメンバーはそれぞれ政府の役職に推薦されたが彼らは辞退し、名前を捨て一個人の冒険者として生きる道を選ぶ。


旅立ちの前に亜人種と人間達が打ち解け合い新しい時代の訪れを感じる街の空気を感じながらアレックスは仲間達に感謝の言葉を告げる。

仲間達は相変わらずの憎まれ口を叩きながら、にこやかにアレックスの背中を叩き先に行く。

そして振り返りながら「行こうぜリーダー」と声をかけた。


その光景にアレックスは自分を拾ってくれた亜人種の家族達の姿を重ねて涙を浮かべ、それを拭うと過去の悲しみの鎖を断ち切り笑顔で仲間の元に向かうのだった。

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