860回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 629 : 破壊の嵐
紗夜
雪玲
太極剣とは太極拳の武器術。
太極拳特有の円の動きによる攻防一体の斬撃が紗夜に襲いかかる。
化け物を相手にした力強い斬撃を必要とする紗夜の退魔剣は、太極剣の速度と柔の動きに対して相性が悪い。
しかし紗夜は雪玲の殺気から彼女の剣筋を読み、サムライマスターの抜刀術のパッシブスキルを併用した神速の斬撃で雪玲の数手を一刀で凌ぎ、切先で攻撃も行う形で応対する。
雪玲はこちらにきてからショウタイフォンの師事で太極剣を学び、今では瀑岺会でも上位に入る武術の使い手に成長した。
その上達には目を見張るものがあるが、どうもそれは彼女の中の空虚を埋めるためのようで、紗夜は彼女を見るのが辛かった。
関わるのを避けている間にいつの間にか雪玲は紗夜を敵視するようになり、事あるごとに紗夜に刃を向けるようになった。
雪玲の率直すぎるその殺気が致命の一撃を狙いすぎるが故に太刀筋を読む事を容易くしたが、その事実が紗夜の心を静かに締め上げていく。
攻めきれないことに苛つき始めた雪玲は、身につけた銅銭を幾つか宙に浮かし、霊魂を憑依させて飛翔する髑髏にして紗夜に攻撃させ始めた。
道術は死霊術に近い特性がある。
紗夜が札を取り出し火蜂に変えて髑髏に対応すると、雪玲は呪符を取り出し数体のキョンシーを召喚して攻撃に参加させた。
紗夜はキョンシーに蹴りを加えながらそれを足場に背後に飛び、空中で人差し指と中指を立てて刀印を結ぶと、それを使い五芒星を描き簡易的な結界を張り追撃する髑髏を霧散させ、2枚の札を取り出し「急急如律令」と口にしそれを投げ二体の鬼を呼び出すとキョンシーの迎撃にあたらせた。
雪玲は攻勢を緩めず紗夜に迫りながら両手を振り袖の下から数本の剣を宙に飛ばすと、それに霊魂を憑依させ紗夜に攻撃させる。
「道士というより奇術師ね」
紗夜は皮肉を言うように口にし札を空中に撒く、それらが紗夜の周囲を飛び回り飛剣の斬撃を防いだ。
キョンシーと鬼の戦いの余波で足場にしていた建物が崩壊する。
しかし紗夜は狩衣の下から無数の式札を展開して足場にし、雪玲も同様に身に纏った銅銭を展開し髑髏に変えて足場にしながら二人の剣戟は激しさを増していく。
無重力空間で高速で空を飛ぶ様に交差しながら、互いの強力な攻撃スキルの応酬が続き。
火蜂と髑髏が互いを攻撃しあい、そのぶつかり合いが二人の剣戟を中心に竜巻のような強風を産み、さながら破壊の嵐へと様相を変えていった。
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雪玲のAIイラスト太極剣がうまく出力できなかったので刀になってます。




