表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
861/873

852回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 621:砂塵の向こうに

この地域のマフィアを中心にした獣人の自警団たちがミイラ獣人達の攻撃を受けていた。


ミイラが獣人を掴むと、その体に巻かれた布が意識を持っているかのように伸びて獣人の体に巻き付いて、新しい獣人ミイラにしている。


「ここで弾を補充しながら僕達を攻撃してたわけか」


「異端審問官のスキルだわ、近くにプレイヤーがいるわよ」


僕はすかさず琥珀のダガーを構えて生命力探知をする。

高台の離れた位置に不自然に現場を眺める人物がいた。


僕は急いで走りながら山刀で衝撃の大罪魔法を発動、飛ぶ斬撃で周囲の建物を破壊して煙を上げる。


ミイラの動きが弱まった。

その傍観者が現場を見られないように煙を上げたのが功を奏したらしい。


僕は傍観者の視界が届かない位置に入ると「こっちだ!早く!!」と叫ぶ。


獣人達は人間であるぼくを警戒して顔を顰めたが、その中の灰色の老狼獣人が僕の方に向かうと全員彼に従った。


スラッとしたモデル体型の黒服黒手袋の老狼、灰色の毛皮と顔に刻まれた傷と歴史を感じる皺が彼の潜ってきた修羅場の数を示しているように見えた。


彼は僕の横に来ると、ミイラの様子を一瞥した後手にした銃に弾を込め始める。

銃身(バレル) を捻り外し、片手に持った火薬を流し込み弾頭を押し込んで、その上から銃身をねじ入れる。


近代式の銃に比べると回りくどい仕様のそれを、彼はそれを慣れた手つきで一呼吸の間にこなしてしまった。


使う拳銃は装弾数1発のフリントロック式のクイーンアンピストルに似ている。

銃身に火薬と弾丸を流し込む従来のフリントロック式に比べて、ねじ込みバレル方式は口径に合った弾丸が使えるため威力と精度が優っているのが特徴だ。


ベルトの左右に三丁ずつ差したそれが翼のように見える。


ベルトから混沌侵蝕を感じる、おそらくベルトに差している間に装弾が終わるオブジェクト。

手で装填するのはおそらく連続装弾可能数の上限になるたびに、一度その操作が必要だからだろう。

記録と再現の力なのかもしれない。


「小僧、敵の位置は」

低く唸るような声で彼は僕に聞く、その目は観測者のいる砂塵の先を見ている。


何も話していないのに状況を理解したらしい、プレイヤーと戦い慣れてるようだ。


僕は観測者の方向を指差すと、彼は物陰から身を乗り出し砂煙を凝視し、砂煙の微かな隙間に見えた敵の姿に向かい銃撃を始めた。


早撃ちすぎて普通に一丁で連射して見えるが、右で三発、左で三発、都度抜きながら撃っている。


プレイヤーはHPが続く限りあらゆる攻撃から守られるが、攻撃が当たったという感触自体はある。

信じられないことに彼はこの距離から敵の目に延々と的中させているのだ。


敵もたまらずその場を離れ、ミイラ達も彼を追うように撤退し砂煙が晴れた。


「今のうちだ、行くぞ」

彼は淡々とそう言いながら群を従えるボス狼のように先を進む。


腰に刺したサーベルのせいか憲兵のような気高さすら感じる。

人間から海賊と呼ばれはしているが、モンスターの海賊たちは元は魔王軍海軍だったことを思い出す、彼も位の高い海軍人だったのかもしれない。


僕は生命力探知で敵プレイヤーの位置を、紗夜は式神でミイラ爆弾の位置を教えながら、僕達は敵を振り切り、彼らのアジトまで逃げ延びることに成功した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ