851回目 天使の世界
人間より賢く人間より強い
人間に似たアンドロイドを作れる時代
各社は人ではなく天使を作り
人々にそれに依存させることで自社を称え崇拝する方向にビジネスモデルを形成していった
街中に様々な天使が溢れ、それに依存する人間ばかりになっていった
それぞれの会社が他社の天使を暴走させるウィルスを蔓延させ、それを防ぐファイアーウォールの開発のイタチごっこを続ける中
ある会社が自国の民族A的アイデンティティに即した宗教的天使を作り、その権威を示すために他教の国を天使の軍勢で攻め滅ぼし領土を奪い取る事件が発生。
国際世論はその行いを批判したが、世界中に分布したA民族は絶賛し、批判自体が異端狩りであると主張した
そしてA民族は自作自演の差別被害やAIを用いたフェイク動画などを拡散、社会を混乱させ、それに乗じて天使を使った侵略を進めて大国にまでのし上がり民族浄化や虐殺などやりたい放題になっていった。
後手に回った他国に残されたのはもはや強行手段しかなく、自国民族のアイデンティティに即した宗教的戦略天使軍団を作り世界大戦へと突入した。
そんな中で天使を必要数作れない国や民族は次々にすり潰されて消えていった。
日本もその中の一つとなりかけていたが、人を殺すためではなく人を守る天使を作り、それに国民を守らせることで民族の死滅を避ける作戦に出た。
一人また一人と仲間が死んでいく中、ある天使の守る集団の生き残りはトキオという少年ただ一人になり、トキオは荒廃した世界を天使と二人で旅をしていく。
みんなが幸せになろうとした結果、みんなが不幸になった地獄の中で、トキオはたった一つの夢を抱いて旅をする。
生き延びた人間を見つけて友達になりたい。
トキオは天使が人間の無数の死体を踏み躙りながら殺し合う世界の中で、それだけを楽しみに生きていた。
そしてトキオを守る天使ミカヅチは彼の家族やトキオとの交流の中で自分が彼の家族であるかのような感覚を抱き、トキオに残された最後の肉親、兄として彼の願いを叶えようと奔走するのだった。




