850回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 620:異端狩りの街
「せっかくだから私のスキルを見せておくわね」
紗夜はそう言うと刀に手をかけた。
そういえば陰陽師としての彼女の力は自前で、プレイヤーとしてのスキルはまだ見たことがなかった。
彼女が刀の鯉口を切ると鞘の中から光が漏れる。
「抜刀、 霜月一閃」
紗夜が虚空に居合い抜きをすると霧のような閃光が横切る。
次の瞬間ミイラ獣人たちが全員斬り裂かれて死んだ。
「これが私のサムライマスターのスキル、居合い技。スキルは使えるけど刀術に関しては専門外だからあまり期待しないで」
「その割にはしっかり戦えてると思うよ」
「怪異相手に霊刀を使ってたからそれなりにね、でも対人戦が得意とは言えないわ」
つまり瀑岺会のメンバーと戦う上でその認識が必要ということらしい。
彼女は自身の実力を卑下するタイプじゃない、気をつけろ、という意味なんだろう。
「妙だな手応えがなさすぎる」
ブラドが静かに違和感を口にした。
たしかにあっけない、
それに何か違和感がある。
僕は周囲を見まわし死体の位置に妙な規則性があることに気づいた、この配置は……。
「いけないすぐにここを離れよう」
声を掛けて走り出すと背後から死体が爆炎をあげて爆発し始める。
死体の配置は逃げ道を塞ぎ、僕らを爆殺する形になっていた。
僕は琥珀のダガーを起動し植物で地面を捲り上げて左右に死体を転がし、爆発の隙間を通って走る。
建物の影からも爆発が僕達を襲う。
視界の端に進行方向の向こうでミイラが首を掻き切り死んでいくのが見えた。
死体の位置は生命力探知じゃわからない、僕の能力を理解した上で裏をかく作戦なんだろう。
「紗夜」
「任せて」
彼女は瞬時に白い鳥の式神を数匹飛ばした。
それを使い死体の位置を把握した紗夜が「こっちよ」と僕達を誘導する。
暫く進みひとまず安全圏に入ると、彼女は言いづらそうに僕を見た。
「街の住人が襲われてるけど行く?」
「もちろん」
「言うと思った、こっちよ」
彼女はやれやれといった様子で苦笑いすると道案内を続けた。




