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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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848回目 天界の門

天使が空をゆったり飛んでいる世界があった。

人の心は穏やかで

平和な時間が過ぎていった。


しかしやがて人は欲望を持った。


人を支配するため天使を捕まえようと天使を撃ち落とし。


ゆったりと生きる天使を妬んだ人間が天使を撃ち落とし。


そして人々は互いを憎み殺し合い戦争し始め、それに巻き込まれ多くの天使が撃ち落とされていった。


そして最後の一人になった天使を守るために部族の戦士が護衛のために里を飛び出した。


天使のそばに吹く風に乗ればグライダーはどこまでも飛べる。


言い伝えによれば天使は天界に向かい飛んでいる。


戦士は天使を守って戦いながら人の悪意を嘆く。

この世界はただゆったりと空を飛ぶことさえ許さない人間の世界になってしまった。


天使は何も言わないが、その羽ばたきや無言、そしてその向かう景色の全てが何より雄弁に戦士に語る。


天使はただこの世界を慈しみ、愛している。

そして戦士は理解する、

天使は多数のうちの一つである事を。


そしてこの先に何があるのかも理解する。

その事を天使も悲しんでいるように思えた。


やがて天使と戦士は景色を越え、

雲を越え、蒼き闇と光の境界を抜けて、

眩い光の空に出る。


そこには目を刺すような無数の極光があった。


戦士は危惧していたことが事実だったことに悲しみを覚えた。


殺された天使の数の極光、それは神の怒りだった。

空を飛ぶ天使たちは世界を慈しみ愛する神の心だったのだ。


極光は輝きを増して、灼熱の炎を帯びて、

この世界の全てを焼き尽くしていった。


ただ一人、戦士だけは、

旅を共にした天使の翼に抱かれ守られていた。


戦士が目を覚ますとそこには新しい世界があった。


見渡す世界にいるのは自分一人。

戦士は孤独感に潰されそうになる。


しかしそんな戦士を呼ぶ声がした。

そちらを見るとそこには翼を失った天使がいた。


天使は戦士の手を取り笑顔を見せる。

そして空の旅のように彼の手を取り歩き始めた。


空には無数の天使が飛び、

世界に光が満ちていく。


戦士はその意味を理解すると武器を捨て、

新しい世界に踏み出していった。


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