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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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827回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 606: 荒廃地区ディアロボス

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 馬車に揺られながら僕はマックスから目的地ディアロボス地方についての情報を聞く。


 この地方は元々荒れ果てた無法地帯だったが、商人王との交渉でマフィアやギャング達が自治組織として機能を果たして復興を果たした場所だった。


 それが半年ほど前、マフィアに対する民衆の武力蜂起による革命が発生した。

 それを影から操っていたのが瀑岺会だ。


 彼らは革命を煽り支援し、革命後のこの地方の社会システムの空洞期間を利用し、詐欺や恐喝などを駆使して彼らの配下の勢力でこの地方における独裁権を得るに至った。


 それ以降ディアロボスは観光地として栄え、諸外国の富裕層も集まる豊かな都市になった。


 しかしそれは表面上の話、観光地の裏には大量の廃墟とスラム、その中心に瀑岺会に忠誠を誓った富裕層だけのメガロポリスがある。


 スラムでは皆邪神ラヴォルモスの信仰をしているようだ。

 初めは邪神信仰のミサに参加すると金をもらえて、金目当てに信仰させるが、互いに監視させて信仰度が高いほど報酬と地位が高くなるシステム。


 金銭目的でのめり込ませて、それがアイデンティティになるように特権階級意識と不信仰者に対する差別と迫害で気持ちよくなるようにリンチを常態化させる。


 そのサイクルで発生する利益はメガロポリスに吸収され、その中では健全な社会を装った世界が広がっている。


 居住者たちが自らの立場に疑問を持つことのない悪辣な気遣いの完備さだ。


 弱いものが弱いものの生き血を啜る地獄、そんな世界で生きられない人達を守る為に、かろうじて勢力を維持しているマフィアとギャング達が瀑岺会の支配権に抵抗し、僅かながらに廃墟地域にオアシスのような環境を作り治安を維持しているらしい。


「どんなに豊かな国でもその時がきてないだけ、臭いものに蓋で見えない様にして内側はじわじわと腐って手遅れになっていくのはどこも変わらん話だにゃー」

 リガーはなんだか昔を思い出すような顔で言った。


「平和に慣れそれが当然と錯覚した人々はもっと楽で豊かな暮らしを求めて変化を求める、そうなった時が悪党の稼ぎ時というわけです」

 マックスは難しい顔で言う。


「あらゆる理不尽な新しさに正当性が与えられ、その環境で人々の欲をくすぐり最終的に全ての利権を自分が握る罠に誘い込む……か、まるでこの世を地獄にしようとしてる悪魔だな」

 クガイは胸糞が悪いという顔で言った。


 マフィアやギャング達も瀑岺会により駆逐され続け、この地方が完全に落ちれば次はここを足がかりにムカルム商国全土に手を伸ばし始める。

 そのための準備も着々と進められているらしい。


 ここまでの話を聞いて僕は妙だと思った。


「僕の知る瀑岺会は華僑としての仁義を重んじる組織だった、一般人を巻き込んだ地獄を作る様な事はしないはずだよ」


「つまり今の瀑岺会を指揮しているソウハはあなたの知る人物とは違うかもしれないということ?」

 紗夜が興味を示して僕に尋ねた。


 あっちの世界の瀑岺会は古代中国の民衆による互助を目的とした秘密結社、いわゆる 幇会(ぱんかい) を元にした組織だった。


 こっちの世界では瀑岺会の設立の理由がプレイヤーの保護のためって名目。

 とすると方針が変わるのはわからない話じゃない。


 でもファンソウハという存在は瀑岺会の組織を永続させるための象徴の様な立場にあった。

 それがここまで違う組織性を推進するかというと疑問が残る。


 僕はそうみんなに話すと、紗夜は少し考えた後に僕をみた。


「ソウハが貴方の知る人間と別人なのだとしたら、貴方を呼ぶのは本物のソウハを知るため?」


「それとも彼を変える何かが起きたか」

 僕が考えながら呟くと紗夜は少しハッとした顔をしたあと何かを考え込み無言になった。

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