826回目 天才錬金術師が現代に転生したら生み出したホムンクルスが悪魔と呼ばれて恐れられていた件
中世暗黒期と呼ばれる時代。
争いばかりで荒廃した社会の中、貧しい幼少期を送ったラケルは、そんな中でもハッピーに暮らそうと教える養父母の影響を多大に受けて育った。
森で食べ物を探していたところ猪に襲われている女の子を見かけたラケル。
猪を追い払おうとして大怪我を負ったラケルは、女の子の保護者である錬金術師に命を救われ錬金術を知る。
その後錬金術に興味を持ち、錬金術師から幾つか技術を教わると、あっという間に独自の技術を生み出し力をつけた。
そんな彼の才能を活かし、彼の貧しい生活を救えるかもしれないと、錬金術師は都市に暮らす錬金術師のギルドへの加入を勧めた。
ラケルは都市で才覚を表し、世の中をもっとハッピーにしたくて研究を続けて成果を出した。
そんな彼にすぐにパトロンがつき、パトロンが教会も黙らせてくれるから秘密裏に使ってた協会が異端審問で潰した異教や邪教の秘術や禁術を使い放題なのはよかったが、パトロンが金儲けに走り軍用や政治的な暗躍のための兵器を作らせてきてもやもやした生活を送る事に。
そんな中でお金だけはあったのでこっそり弟子に技術集団を作らせて、貧民のためのボランティアで必要なホムンクルスに錬金術の提供をしていた。
しかしやがてパトロンの権力が強まり政敵に恨まれて守りが弱いラケルは暗殺されてしまう。
自分のお金で守りを固めるべきだったのだろうけど、暗殺されたら天の采配だと思う事にしてボランティアに全額投入していたので諦めはついた。
ただ残された弟子たちや、家族の代わりに作り出したホムンクルス達の事が気がかりに思いながら、彼の意識は薄れていく。
目が覚めると、ラケルは異国の服を着た子供になっていた。
周りを見回すと見たことも聞いたこともない石造りの街並み、東洋の言語で話しかけてくる周囲の大人達。
頭が痛み血が流れてきて、自分が頭を怪我している事に気づく。
その夜病室の窓から見た夜空の星の位置の若干のズレから、自分が未来に転生したらしい事を理解する。
家に帰った後カレンダーを見て西暦2025年だとわかった、おおよその計算が当たっていてにんまりハッピーしているとまた親に心配された。
その後使い魔として使役していたホムンクルスの黒猫がラケルを見つけ出し、彼の産み出したホムンクルスや道具が後世で悪さを働いているらしいと聞かされた。
そこでラケルは研究途中で実現できていなかった物質を介さない霊的な錬金術を試み、生前用いていた魔眼能力を復元する事に成功した。
魔眼はこの世界に潜む 亜次元生物 を見抜く事ができ、その中に存在する命令回路を理解できれば従えることもできる。
アストラルとはざっくり言えば幽霊、命令回路は人間の神経回路のようなもの。
人間の精神による現世への存在の焼きつきがアストラルを残し様々な現象を引き起こす事がある。
ポルターガイストなどの心霊現象を起こすメカニズムを利用すれば、物質的媒介を解さずに物理現象を起こす事が可能だ。
かつてのラケルはそれをホムンクルスに使用していた。
いわば彼の産み出したホムンクルスの幾らかは人工幽霊と呼べる存在でもあった。
ラケルはそれから逸れて悪さを行うホムンクルスを閉じ込める 牢獄 をスマートフォンの記憶媒体上に魔術式と魔法陣を刻んで作り出して、ホムンクルスを見つけては対処し、スマホに回収、時にはそれを使役していく生活を送っていた。
そんな中で、ボランティアで産み出した人を救うためのホムンクルスが自分の霊魂を追い日本に住み付き、神社で神様を行っていることを知る。
彼女はラケルが失った家族の代わりに産み出した妹でもあった。
ラケルはその妹レミアに会いたいと思う。
そして彼女のいる場所は偶然にも一週間後の修学旅行先だった。
レミアに会いに行ったラケルを待っていたのは、兵器として生み出され人の悪意によって用いられ続けた事で悪意の化身の様になった他のホムンクルス達だった。
レミアに会いにくると予想していた彼らは、彼らの宿主の権力者の力を使い修学旅行先を変えて、ラケルにレミアの情報を掴ませ、ラケルの錬金術の力で世界を支配するために干渉してきたのだ。
そこでラケルはかつて自分が生み出したホムンクルス達が、人類史上で悪魔と呼ばれる存在になって恐れられていた事。
ボランティアで産み出したホムンクルス達はその奇跡の力で各地で天使や神と呼ばれていたことを知る。
そして悪魔は天使を狩り食ってその力を得ているということも。
レミアの力を使いながら悪魔の一人がラケルに説明した。
ラケルは激昂し制御化にあるホムンクルスを一時的に融合錬成した攻性ホムンクルスを生み出し、魔眼の力も使い脅威的身体能力で傀儡化された無頼漢も蹴散らし悪魔達を圧倒する。
そこからラケルはレミアのような被害を出さない様にホムンクルスの保護と、悪魔達の支配を解体して彼らを封じるための活動を始める事に。
そんな中で悪魔の勢力も一枚岩ではなく、裏社会の根幹に食い込んだより強力な勢力が存在することを知る。
その勢力のトップであるゼッドはレミアと恋仲にあり、彼女を死なせた元凶であるラケルと、敵対組織の悪魔達を激しく憎悪していた。
敵対勢力を潰すために人間達にどんな犠牲が出ても厭わないゼッドは国内でテロを多発させてしまい、挙げ句の果ては隣国に日本を攻め込ませ核兵器を使わせようとする。
ラケルはなんとかゼッドを止めるために戦うが、状況はどんどん泥沼化していく。
やがてラケルは自分がかつて嫌悪していた民衆を虐げ戦争を好む政治家達と自分が同じ様な立場になりつつある事に自覚する。
憎悪に憎悪で立ち向かっては火事を火で消そうとする様なものだ。
ラケルはそこで独善でも悪意でもない、人の自由を求める心に基づいた作戦に出る。
人は欲望に塗れた汚い生き物だが、汚れた土に綺麗な花が咲く様に、醜い善性でも人は他者を思いやり繋がりあって力を合わせる、それこそが人の本質であるとラケルはゼッドとの戦いで示す。
そんな戦いの中ゼッドは自身の様な悪意がレミアを殺した事に自覚するが、それを否定するために世界を滅ぼそうと世界大戦を起こそうとする。
一介の錬金術師に対応しきれない事態にラケルは絶望しかける。
そんな彼に彼の生き様をそばで見ていた悪魔達が助言を与え、ゼッドに対抗する手段を与える。
悪魔達が欲しくてしかたなかったものは、ラケルの示した醜い善性の中にあったのだと彼らはいう。
自分たちは変わったのではなく欲しいものを手に入れるため、醜い善性の中で満たされるハッピーを見つける時間の為にラケルに協力するのだと彼らはいった。
世界中のあらゆる神秘の力を使い強大なアストラルウェポンに進化したゼッドに対して、悪魔達の協力を得たラケルは天使と悪魔を合わせた究極のホムンクルスを生み出しゼッドを撃破する。
そして平和になった世界で、不器用ながらも自由に生き始めた天使と悪魔、そしてゼッドとレミアの再生体の小さなホムンクルスと共にラケルは新しい世界で生き始めるのだった。




