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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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823回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 603: プライマリーバランス

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 その晩僕はベイルと二人きりの寝室で、ベッドに座り資料を広げて、次の商売のための下準備をあれこれまとめていた。


「ダイナマイトだけで十分大金持ちになれただろ」

 ベイルは不満ありげに僕の背中にもたれかかりながら甘える。


 最近忙しくてあまりかまってあげられてなかったから欲求不満なのかもしれない。

 僕はお詫びも兼ねて彼の頭を撫でる。


「長期的に見たらね、でも僕達には時間がないんだ」


「商人王が無視できない金持ちになるためか。にしたってわざわざ一生使っても使いきれないような金を捨てて次の賭けに出るなんて理解できねーけど」

 ベイルはむふーと満足げに鼻息をつくと、僕を後ろから抱きしめ頬擦りしながら尻尾を振る。


「そんで、次は何するつもりなんだよ」


「この港街を僕らのモノにする、って言ったら信じる?」


「雄馬の言うことはいつも突拍子がないから信じられたことがねぇよ」

 とベイルは鳩が豆鉄砲を食ったような顔で困惑し、そんな彼を見て僕は笑った。


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 翌日から僕は大商人達にダイナマイトの全権利の移譲を条件に、彼らの名義と資産を使いこの地方の金貸しを全部買収させてもらった。


「後ろ盾がないとこの地方の商売に大きな介入ができない、大商人たちに買収の手助けをさせた事で事実上の後ろ盾にしたわけですか」

 マックスが感心したように言う。


 その場にいる仲間内で理解できているのはマックスとクガイ、それに昨晩僕から説明を聞いたベイルだけらしく、ロアノークの商人たち以外は皆首を傾げていた。


「雄馬って時々悪辣だよなぁ」

 ベイルは褒めていいのかわからないと言った顔で言う。


「向こうも素人じゃないし理解した上でやってると思うよ」


「お前とパイプ繋いでおけば儲けられそうって事か。無自覚なのかなんなのか周りを巻き込む天才だなお前は」

 クガイが言った、彼もインガとの付き合いからこの手の話に明るいようだ。


「金貸しを集めてどうするつもりなんだ?」

 ヴカは僕に尋ねる。


「お金の貸し借りに投資と融資って仕組みを加えてこの地方に金融っていうインフラを作るんだ」

 僕はそう答えてみんなに今後の動き方を説明した。


 この世界にはまだ銀行と金融のシステムがない。

 そこで僕は金貸し達に投資による株の取引、それに加えて預金を集めてそれを元手にさらに融資や投資を行うという商売をさせた。


 新たに発生したインフラは爆発的な速度で普及していく。

 一週間で僕たちは港街のほぼ全ての商社の経営権を握るまでのし上がった。


 あまりにも爆速だったので正直僕も驚いているのだけど、どうもこの街の商人達が意図的に傘下に入ることで新しい既得権の上役に収まる計画で全力で後押しした結果らしい。


 つまりほとんどこの街の商人の恐ろしいまでのフットワークの軽さと野心と順応性の高さから発生した状況のようだ。

 そして傘下の商人達はこの影響を他の街にもすでに伸ばし始めている。


 正直やってる事は経済的なテロで、王の側が僕を危険因子として認識したら厄介な事にはなる。

 危ない橋ではあるけど条件は整った、あとは向こうの出方を伺うだけだ。


 そんな中、国王からの特使がやってきた。

 渡されたのは案内状一枚のみ。


「今宵商談に伺います」

 とだけ書かれていた。


「いたずらかなんかじゃね?」

 とベイルは怪しむ。


「微かにだけど混沌侵蝕を感じる、多分これもオブジェクトの一つだと思う」


「危険だな、処分しようか?」

 ミサゴが斬ろうとする。


「チャンスはピンチと大差ないって言うし、せっかくの危険なら掴みに行くよ」

 そう言って僕は彼を制止して、商談の準備を進めつつ自室で商人王の来訪を待つことにした。


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