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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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814回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 595: 悲嘆の海コキュートス

 補給を終えた僕らは遠洋に出て、村にいる間に連絡しておいた賭博海賊クラップスと合流。

 彼らの船に僕とベイルとガフールさん、紅蓮地獄からはクガイとヴカとミサゴが乗り込み、そこから先ロアノークへはクラップスの船で向かった。


 クラップスは彼らが拿捕した商船を用意してくれていて偽装は万全、ロアノークの港へもすんなり潜り込むことができた。


 その状況にヴカは妙だなと呟く。

 理由を尋ねるとあまりにも簡単すぎるからだと言った、恐らく誘い込まれていると。


 彼の懸念は恐らく当たっているんだろう、ガフールさんの話によれば暴虐王ディオニスは僕の首を欲しがっている。

 コレクションを傷をつけずに入手するなら陸に降りた後を狙った方がいいと考えるはずだ。

 覚悟していたことだけれど、僕は何が起きても対応できるように気を引き締めた。


 港に入ると何やら人だかりが出来ていて、住民達は何かを見物しているようだ。

 人混みをかき分け先に進むとブラムスハースと書かれた横断幕が高く掲げられ、その下に簡素なリング、そしてリングの上で二人の男が拳一つで殴り合っている姿が見えた。


「行けー!キングD!!」

 興奮した観客がそう叫んで振り回した肘がベイルの鼻に当たる。


「いっでえ」

 涙目になった彼の鼻をさすりながら試合を見ると、そこには筋骨隆々のゴリラ獣人の大男と、整った筋肉はあるが明らかに細身すぎる青年の姿があった。


 見ていて不安になるような対戦カードだったが、青年は肉食獣のようなフットワークで攻撃を交わし、その細い手足で的確にゴリラ獣人の関節を打ち抜き、拳の威力と機動力を削ぎ落としていく。


 そしてわざとゴリラ獣人の拳を喰らって見せながら、ヒットの瞬間に体を捻り吹き飛んだように見せかけて跳ねることで完全に威力を殺し、観客をわかせていた。


 青年がニヤリと笑いゴリラ獣人を挑発すると、余力のなくなっていたゴリラ獣人は怒りに任せて渾身の一撃で勝負をつけにくる。

 青年は待ってましたと言わんばかり迫る拳に向かい踏み込んで迫り、それをギリギリで交わしながらカウンターでゴリラ獣人の顎に強烈なアッパーカットを入れて吹き飛ばす。


 ゴリラ獣人の筋力と全質量を乗せた攻撃を逆手に利用して、カウンターを見舞うことでウェイトの差を覆し青年は見事ゴリラ獣人をKOした。

 決着のゴングがなった瞬間紙吹雪のように白い投票券が舞い散り観客達の悲喜交々の歓声がわっとあがった。

 そしてリングの上で拳を掲げてビクトリーポーズをする青年に対し皆口々に「キングD!!」と叫び声をあげる。


「おいおいキングってあいつの事かよ」

 ゴリラ獣人の方だと思っていたクガイは驚いてそういった。


「この国の王様だからな」

 ガフールさんが言った。


「それってどういう事?」

 尋ねると、ちょうどキングDは僕の姿を見かけてリングから飛び降りてこっちにきた。


「ようこそ山桐雄馬!歓迎しようじゃないか!!」

 そういって彼が僕の肩に手を回し周りに友達を紹介するみたいに見せびらかすと、観客達は僕たちに向かって拍手と歓声を浴びせてきた。


「おいまさか」

 ベイルが目を丸くして、それに応えるようにガフールさんは小さく首を縦に振ると「彼がこのロアノークの暴虐王ディオニスだ」と言った。

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