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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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813回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 594: 託された願い

 ひとまず僕は現状の再確認をする事にした。

 全部で七つある宝輪のうち奪われたのがクガイの操舵輪、インガのメダリオン、影牢島の火の指輪、グリダロッドの軍配の四つ。

 こちら側にあるのがイハンスレイで紗夜が手に入れたっていう宝輪が一つ。


「そんで残りがシラクス王家の宝、もう一つは海賊国家ロアノークの暴虐王ディオニスが持ってるって話だ」

 クガイはそういうとどうしたもんかなといった顔で地図を眺め顎をなでる。


「最後の二つだけいきなり入手難易度高えなぁ」

 ベイルはうへぇというようにそう呟いた。


 確かに国を相手にして手に入れるのは大変だ、だからこそ邪神族が最後まで手出しできてないって事なんだろうけど。


「どっちも大変そうだが、距離からするとシラクスの方が近いな」

 ヴカが地図をなぞりながら言う。


「ロアノークの私掠船で海路は塞がれ、陸路もグリダロッドに阻害された上で二国に攻められてるシラクスの方が奪うには都合はいい。それに派閥争いでごたついてるようだし、そのどさくさを利用すればさほど時間も掛からんだろうな」

 ブロックさんが淡々というが、クガイがそれに対して少し難しい顔をした。


「俺は次狙うのはロアノークにしようと思ってる」

 口を開いたクガイはそう言うと、僕たち一人一人の目を見る。


「今話にあったようにシラクスは国の窮状と情報工作やらで貴族どもが暴走してごたついてる。国王がそれの対処で動けない代わりにミクマリ姫が方々に救援を求めて回ってるんだがそれも芳しくないらしい」


 彼は難色を示すみんなの顔を見て、そう思うのももっともだと言うように小さくうなづきながらも続ける。


「勝手な話ですまねえがシラクスを助けてえ、その上で宝輪を手に入れる。そのためにロアノークにいきたい」


「また無茶苦茶なことを」

 ダルマーさんが顔を押さえて首を横に振る。

 その場にいる紅蓮地獄の面々はそれぞれ同じ気持ちらしくため息をついた。


「私もその考えに賛成だ」

 ガフールさんが言った。


「暴虐王ディオニスは珍しい人物やモンスターの首を集める趣味がある。魔王候補者である雄馬が行けば話を聞いてくれるかもしれない」


「えっとサラッと言われたけど、僕の首を餌にして会うってこと?」


「蜘蛛やカマキリと同じことだ、目的を果たして速やかに逃げればいい」


「簡単に言ってくれるなぁ」

 ベイルが雄馬は渡さないぞ!という様子で僕をギュッと抱きしめてガフールさんを睨む。


「彼から条件を引き出しシラクスに有利になるような材料を手に入れれば、シラクスに対して交渉して宝輪を手に入れつつあの国を救うことができる。君にならできない無茶ではないと考えるが如何か」


「買い被りすぎ、と言いたいとこですけど。他に手段もなさそうだしやってみますか」


「出たよ雄馬の向こう見ず」

 ベイルが顔を押さえて首を振る。


「いつも心配かけてごめんね、でも僕は絶海に行かなきゃ。ガルギムさんの事まだ諦めきれないしね」


「雄馬……」

 クガイは嬉しいような申し訳ないような複雑な顔で僕を見て呟いた後、ガフールさんの方を見た。


「海賊を配下にしてる暴虐王はともかくシラクスが海賊と交渉というわけにはいかねえ。手段は脅迫になるぜ、いいのか?」


「私は雄馬殿について行くと決めた、彼が必要とするならその手助けをするまで。やり方はお前たちに任せる」


「いい覚悟だ、あんた意外と海賊向きかもな」


「冗談ではない」

 突っぱねながらもガフールさんはどこか穏やかな様子だった。

 ガフールさんと目が合うと、彼はまっすぐな目をして僕を見つめた。


「信念に従いこの手で成せる全てを尽くしてあらがうしかない、君たちとの旅でそれを教えられた。もう迷いはない、最後まで同行させてくれ」

 ガフールさんは僕を見つめてそういうと手を差し出してきた。

 僕はその手を握りしめ固く握手をする。


 不安がないわけじゃないけれど、僕にできる全てでみんなの期待に応えたい。そう強く思った。

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