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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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810回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 591: どんぐり拾いと迷い姫

 村の雰囲気は明るくなったがみんな痩せていて食糧状況が良くないのが見て取れる。

 村人の話によるとアーバン達は村人の生活のために海賊をしていたらしい。


 つまりこの村の環境が良くなれば海賊をしなくても良くなるという事だ。

 余計なお世話かもしれないけど、何かできることがないか探してみることにした。


 食料問題の解決が先決、ということはまずいつ壊れるかわからない農具、それに荒れ放題の農地、後は“敵“の対処方法をなんとかしたほうがいい。


「壊れた柵、農地の荒らされ方、足跡から察するに中型かな。ふーむ」

 などと呟きながら準備を進めていく。


-

—-


 聞いたところ農具は人間から貰っていた物を騙し騙し使っているらしい。

 彼らのみだと金属の確保ができず木工品までしか作れないとの事だったので、とりあえず鉄の入手方法を彼らに教えることにした。


 村人と一緒に海岸に行く。


「山の上の溶岩石が風化して川で流され海岸に辿り着いて砂鉄になるとこういう風に黒い砂浜になるんだ」


「じゃあこの砂全部鉄なのか!?」

 ヤブイヌのおじさん達は驚きつつも黒い砂を皮袋に詰め始める。


「よくこんな場所わかったなぁ」

 ベイルが驚きながらいった。


「船に乗ってる時に見えたからね、手付かずのようだったから何かの役に立つかと思って覚えてて良かったよ」


 とりあえずこれで鉄の入手方法はクリア、次は食料問題だ。

 畑で作物を作るのは時間がかかるので、すぐに手に入る食料の入手方法も教えることにした。


-

—-


「食い物探してなんで遠足してるんだにゃ?」

 食い物と聞いて無理やりついてきたリガーため息混じりにいう。


 山道を歩く僕らの周りではヤブイヌの子供達がわいわいと騒ぎながら駆け回っている。

 「どんぐりー!」と叫びながら子供達は手慣れた様子でどんぐりを集め、腰につけたカゴをあっという間に満タンにしていく。


 そんな中旅の途中道に迷ったという人間の女の子と出会った。

 彼女はミクと名乗り、彼女を見たクガイが目を丸くした。

 それを見た彼女はいたずらっぽい笑顔を浮かべて指を口の前に立てて見せる。


「クガイの知り合い?」


「うんにゃ、知らねぇ。なぁ知らねえよな?」

 明らかに挙動不審で頭をかきながらクガイはいう。


「うんうん、私たち初対面だよー?」

 そういうミクは吹き出しそうになるのを我慢しながら言った。


「どう見ても怪しいにゃ……」


 呆れながら訝しむリガーに僕も同意見だったが、悪い人ではなさそうなので彼女のことはクガイに任せる事にしてみんなでどんぐりを集める。


 村に戻った後僕はヤブイヌの子供達とどんぐりを仕分けした。

 マテバシイとスダジイのアク抜きが不要なものと、アク抜きが必要なもので分ける。

 アク抜きが必要なものは水につけておいたり、木灰を混ぜた水でどんぐりを煮てアク抜きをしたりと時間がかかるのでやり方を教えた後は後回し。


 甘みのあるスダジイを臼を使いどんぐりの皮をとり砕いて粉にしてこねて丸めて焼いてクッキーにする。

 マテバシイは粉にした後小麦粉と混ぜ、果物の皮を使って作っておいた天然酵母を混ぜて発酵させて焼いてパンに。

 その他は片栗粉などを混ぜて蒸して団子にする方法なども教えるとみんな喜んでくれた。


 子供達に混じって食べるミクも「へぇーこんな味がするんだ」と感慨深そうに言う。


「お姫様でも食べられるとなりゃ名物にもできそうだな」


「クッキーが栗みたいな風味で美味しいよ、クガイも食べてみなよー」


「おい、バカやめろこんなとこで…ムガッ」

 無理やり口にクッキーをねじ込まれたクガイはなんとも言えない表情でボリボリと齧って飲み込む。


「どうー?」


「美味い……けどもうちょい考えて行動をだなぁ」


「やだークガイったらじいやみたいな事言ってー、ちょっと会わない間におじいちゃんになっちゃったの?」


 クガイは完全にミクの手玉に取られておちょくられている。

 昔馴染みといった様子だけど、詮索も野暮なので生暖かい目でスルーすることにした。


 明日は畑の方を見ることにしよう。


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