803回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 584: 故郷の波音に向かって
僕達は船を進めながら現状確認と次の目的地について打ち合わせを始めた。
クガイの提案したこの先のプランは、ガルギムさん側が鍵を使い絶海に入る時に僕らも便乗して突入する方法だ。
彼がいうには鍵を使うととてつもなくデカい門が広範囲を飲み込むため、タイミングさえ間違えなければ十分可能だという。
「なんだか出来すぎてる、罠じゃないのか?」
ヴカが訝しげに言う。
「誘われてるのかもしれないな」
ミサゴはそう言って僕をみる。
「魔王候補者山桐雄馬、冠理者ヴァールダントの後継になるかもしれない存在。裁定者ラヴォルモスにとって何かしらの利用価値があるのかもしれない」
みんなが僕を見た、敵が僕を狙っているなら僕がこの船に乗っている必要がある。
邪神の目論見を恐れて僕が別行動を取れば、紅蓮地獄は絶海に渡れないかもしれない。
「毒を食らわば皿まで、最後まで付き合うよ」
「よっしゃあ!そう来なくっちゃ!!」
クガイが僕の背中を勢いよく叩き肩を抱く。
その力強さに少し緊張を感じる。
顔を見あげると彼はみんなには黙っててくれというような目をして、僕は小さくうなづく。
「無理や無茶ならねじ伏せればいい。全速前進だ!!」
「おう!!」
船員達はそう答えて慌ただしく甲板に散っていった。
「キャプテン、食い物がもう底をつきかけてる。一度どこかに寄れねえか」
ダルマーさんが困った顔で言った。
「それなら良い場所があるぜ親分!」
ヤブイヌがそう言って、ヤブイヌ達はそういやこの辺りなら近いなと納得したように口々に言った。
「俺たちの村がこの近くにあるんだ、港町のラビアルも今はゴーストタウンだから海賊が寄港しても問題ない」
ヤブイヌのリーダーアーバンはそう言うと、仲間を見渡し僕に頼むような顔をした。
彼らに付き合わせて何日も経ってる、里帰りしたい気持ちには答えてあげるべきかもしれない。
「どうかなクガイ、悪くない話だと思うんだけど」
「ああ、願ったり叶ったりだ。ラビアルなら宝輪のありかにも近い、補給するにはうってつけだぜ」
そう言って彼は船員に指示を出し、進路を港町ラビアルに向けて船を走らせた。




