表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
811/873

802回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 583: アイリスの歌

 今までの宝輪は絶海に入るための鍵。

 残りの宝輪は場所と時間を示す。

 邪神教団サイドに後者は必要ないから見逃されたのかもしれない、というのがクガイの見解だ。


「邪神教団の宝輪は嬢ちゃんが持ってるって事で良いんだな?」


「ええ」

 クガイに問われた紗夜は涼しげな顔で答えた。

 

「見せてもくれねえのに信じるのもなぁ」

 ベイルが訝しげに言う。


 クガイが少し訳ありげにアイリスを見つめると、作り笑いをして「信じるっきゃないだろ」と言った。


 紗夜もクガイも何か知ってる様子だ、それなのに言えない理由はなんだろう。


 ガルギムさんの裏切り、それにプレイヤーとしての能力を使い戦っていた紗夜に対する警戒。

 この二つの出来事の影響で紅蓮地獄の船員達の空気が張り詰めている。


 その様子を見たクガイが口を開く。


「それに男むさい船に紅一点ならぬ紅二点だ、気分も華やぐってもんだなぁ雄馬!」


 あっ僕にこの状況の処理を投げた!


「えっと、助けてくれた人は後でサービスします」


 と指をうねうねさせてみせると、僕のマッサージの味を経験した何割かの船員たちが顔を紅潮させ生唾を飲み口々に賛成を唱えてくれた。


 みんなあとで心を込めてサービスしよう。

 それとクガイにも特別コースを見舞うことにするか……、ふふふ。


 そう思いながらクガイを見ると、僕の邪念が伝わったのか彼は苦笑いして頭を掻いた。


「後は海のご機嫌の問題だな」

 ミサゴがそう言って海を見る。


 見渡す限りの凪の海。

 風がなく波もない、つまり帆に風を受けて進む船も動かせない状況だ。


 クガイのゼフィロスで風を吹かせて進めることはできるが、オブジェクトの過剰使用は混沌侵蝕が使い手を蝕んでしまう。

 彼の双剣のように強力なオブジェクトなら尚更だ。


 みんなで困っていると「ふっふっふー」と笑う声。


「アイリスのでばんなのでーす!」

 そう言ってアイリスが歩み出る。


「何かいい方法があるの?」


「見てのお楽しみですよ雄馬様」

 彼女はイタズラっぽい笑顔をすると船首の方に歩み出て歌い始めた。


 彼女の歌のメロディに沿うように風や波が起き、帆が風をはらんで進み始める。

 みんなその様子に驚きの声をあげた。


「こりゃいいや、お前ら配置につけ!出航だ!!」


 クガイが号令を出し船員達が作業しながら、みんなつられてアイリスの歌を口々に歌う。

 うまくはないはずの歌声たちがアイリスのメロディにのって愉快な合唱に変わっていく。


「不思議な才能だね」


「あの子は特別だから」

 紗夜はどこか遠くを見るような目でアイリスを見つめて微笑んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ