785回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 566:崩壊する地下空間
慌てて外に出ると広大な地下空間の天井にいくつも亀裂が入り、そこから大量の海水が滝のように流れ込み、さらに亀裂を拡大させていくのが見えた。
崩れた岩盤が次々崩落していく中、遠くの地面から巨大な氷柱が伸びて天井に届き、亀裂を塞ぐように広がって水の流入を食い止めた。
この混沌侵蝕の感じはクガイのボレアースだ。
彼がオブジェクトの力で崩壊を食い止めたらしい。
でも一時しのぎに過ぎないようで、氷ごと亀裂がわずかに広がり水が漏れ出ている。
『近くにいるベイルは俺が地上まで連れていく、お前は気合いで脱出してくれ』
「気合いって言われても」
とはいえ彼と合流していたらみんな脱出できなくなるのは明白だ。
「ノープランでもやるしかないか」
僕は顔を叩いて覚悟を決めた。
『あーテステス、聞こえるワイな?そこから左手側にまっすぐ今すぐ突っ走れだワイさ!』
「ブロックさん?ヴカはどうしたの?」
僕は走りながら尋ねる。
僕のつけている通信機はヴカのものと繋がってるはずだ。
『あいつは仕事があるっちゅーてでてったワイな、今は気にせずとにかく走れだワイさ』
なんだか腑に落ちなかったがそうも言っていられない、僕は言われた方角に全力疾走する。
上空から岩石や岩盤、大量の水が降り注ぐ中、植物操作や物性操作とパルクールを駆使して瓦礫や建物を飛び越え搬送路のような場所が見えた。
斜めに上を向いた大きな穴、床式のリフトで上下して荷物を搬送する場所のようだ。
しかし背後からはすでに津波のように土砂と水が押し寄せてきていた。
リフトで上がっていたらとてもじゃないが間に合いそうにない。
地下空間が水圧で潰れるように崩壊し始めた、津波はビルほどの高さになり襲いかかってきている、もう一刻の猶予もない。
「ダメで元々だ!」
僕は搬送用トンネルの傾斜を全力で登り始めた。
フレスベルグの召喚も試したが大罪の悪魔の悪魔を前にしていないと出てこないようだ。
「はぁはぁ、さすがに、キツい……」
スタミナが切れ走る速度が落ちた僕に、背後から迫った津波が襲いかかった。




