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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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782回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 563:グリダロッド争乱(2)

 先に進むと巨大な大空洞があり、その中に点在するようにいくつかの塔があった。

 塔の下には床が見えず延々と暗闇が続いているように見える。


 壁に生やした蔦をロープにして塔のてっぺんまで振り子運動で移動し、見張りをしていた敵兵を蹴り飛ばし、起き上がる前に締め落とした。


 尖塔をロープで渡り、中心の巨大な塔の内部に侵入する。


 建物内の通路には埃が積もり、生き物の気配もない。

 あまりに侵入に対して無警戒なところも気にかかる。


 足元にネズミの骨があった、真っ二つに切断されたような形で散らばっている。


 蔓で鞭を作り進行方向に向かい振ってみると、何かが四方から飛び交い蔦をバラバラに切り刻んでしまった。


 どうやらこの先はトラップゾーンらしい。

 さてどうするかと考えていると、壁際に小動物の足跡が残っているのが見えた。


 先ほどの鞭の断片を投げると、足跡の上は攻撃範囲にないのがわかった。

 どうやら壁に沿って歩けば攻撃範囲を交わせるらしい。


 僕は小動物の足跡を頼りにトラップを避け螺旋状の塔を降りていくと、次第に壁が消えて階段だけになり、真っ暗闇の広い空間に出た。


 足が地面に触れている感覚、恐らくここが地面のはずだ。

 何も見えないが風が肌を撫で、微かな潮の匂いがする。


 ランプをつけると周囲を取り囲むように銀色の金属が光を反射した。

 鉄の矢尻の反射光だ、そう思った瞬間それらが僕に向けて発射された。


 紅玉の腕輪による身体能力と知覚速度の加速、幻影水晶によるマインドリーディングの起動。

 飛んできた矢の先端を山刀の刃で受け止めて逸らし反対側の射手に向かって飛ばす。

 剣舞の様に斬撃を行い矢を全て敵にお返しすると、ランプを投げ捨ててその場から離れた。


 どうして生命力感知に引っ掛からなかったんだろう。

 発見された以上急がなきゃならなくなった。


 敵は暗闇の中でも僕を視認していたようだ、何らかの手段で視界を確保してるのかもしれない。

 僕は幻影水晶を使い周囲の敵兵の目で視界を確保する。


 わかったことが一つ、この場にいる兵士たちは全員グールになっているようだ。

 ネオヴィクトリアを格納していると思わしき施設を取り囲むように、グールがあたりを埋め尽くしていた。


 何十人、もしかすると何百人といるかもしれない。

 その場にいるグールは腐肉化して生命では無くなっているらしく生命力探知では察知不能なようだ。


『幹に瘤がある木を辿れ』

 突然ヴカがそう言った。

 周囲に確かに石でできた木のような物がある。


「侵入口の場所ですか?」


『さあな、グリダロッドのやり方に反抗して基地に忍び込むような馬鹿がいたら教えてやれ。と昔の知り合いに言われたのを思い出しただけだ』


「いたずらか何かじゃないですよね」


『他にやりようがあるならそっちにすればいい』


「無責任なんだから」


 とはいえ今は彼の言葉を信じるしかない。

 僕は障害物や建物の影を使いながら地底の石植物を辿って、なんとか建物の外壁までやってきた。


 確かにこの辺りは見張りもないが、問題はどこに入口があるかだ。

 最後の木の瘤の向きにあたる壁を手探りで探す。


 壁には印はない、地面を叩くように踏んで回ると一箇所固いものに当たる感触があった。

 土を退けるとそれは木の板でできた扉だった、開けると中に隠し通路がある。


 僕は中に入り琥珀のダガーで壁に植物を発生させ地面に埋まった罠がないか確認し、琥珀のダガーがかすかに放つ光を頼りに先に進む。


 横穴の突き当たり天井の板を外して施設に侵入、隠し部屋のような空間に出た。

 そこには一体の白骨死体と手記を見つけた。


 それによるとこの研究所の主任研究員がなんらかの力を得て、他者に飢餓感を与えて国を操りグリダロッドの軍拡を押し進めていたらしい。


 グリダロッド内部でも黒い雪による汚染で作物が育たず、国民の肉体の変異が深刻化していて。 

 この死体は軍部の暴走を問題視する派閥から派遣された内部監察官だったようだ。


 調査を進める中で状況は悪化、施設の人間が次々に発狂しグールになる中、なんとか決定的な証拠に近づいたが深傷を負いここで息絶える結果になった。


 ヴカへの言葉はこうなった時のための保険だったのだろう、最後に彼に対する謝罪の言葉と共にネオヴィクトリアへと通じる隠し通路の場所が示してあった。


 手記に従いダクトに見せかけた通路を抜けると、あまりにもその場に似つかわしくない光景が広がっていた。


 地上と見まごうほどの広大な花園、そして最奥に改造され様変わりしたナイトシェイドの姿があった。


 僕はヴカに悟られないように琥珀のダガーの植物操作で、ポシェットの中の爆薬をナイトシェイドに仕掛ける。

 そして爆破スイッチを押すが反応がない。


 それを嘲り笑うような声があたりに響いた。

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