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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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766回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 547:賭博海賊クラップス

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 次の目的地は危険な海賊クラップスの本拠地。


 賭けで身柄ごと買われた賭け狂いばかりの海賊、奇しくもそれが理由で結束力は高い。

 その種族ごった煮のならずもの集団をバグジーと呼ばれる人間がまとめているらしい。


 身体能力的に劣る人間が代表を務めているというあたり、バグジーと言う人物はおそらく相当な食わせ物なんだろう。


 海賊同士の戦争に来たと思われてもまずいため、僕らは紅蓮地獄を付近の島に待機させた。

 そこからパラディオンに未完成の高速艇を積んでクラップスの島に向かう。


 高速艇は大きめなボートのようなサイズで、平ぺったくてエイのような形をしていた。

 金属でできた流線型のフォルムが近代兵器を思わせる作りだ。


「これがブロックさんが作っている混沌兵装。完成に必要なものがあの島にあるって話だったけど、これひとつで海軍と真っ向勝負できるものなの?」


「ヴカの全盛期を知ってるかどうかで意見が変わる話だな」

 とクガイはニヤリと僕を見て笑う。


「僕次第ってことか、無茶振りだなぁ。だんだんブレーメンのメンバーの気持ちがわかってきたかも」


「お前はやればできる男だ、俺が言うんだから間違いねえ」

 そう言ってクガイは僕の背中を思い切り叩いてガハハと笑った。


 その後僕らは船を島影に隠し、そこから戦火に飲まれ廃墟同然のスラム都市に忍び込んで、ならず者達の目を盗み違法賭場を探し始めた。


 そんな中ヴカはタバコ吸うのやめろと言われても吸いつづけ、その紫煙でならず者に居場所がばれ。

 急いで逃げる最中足をもつれさせ豪快に転んだ。


 みんながため息をつく中、僕はすぐに彼のそばに駆け寄り背負って走った。


 なんとか追っ手を振り切り物陰に隠れる。


「どっかに置いてった方が良くねえかそいつ」


 ベイルが不貞腐れた顔をして言った。

 この場にいるのはクガイとベイルとヴカと僕の四人だ。


「そもそもなんで連れてきたんだ?」


「こいつの船を作るんだ、苦労は共有しねえとだろ」


 その目で見せて少しでも気力を奮い立たせようとしてるのかもしれない。

 だけどヴカの死んだ目は何も見ていないように思える。


 僕は彼の手をとって揉みほぐして温める。


「やめろ……触るんじゃねえ」

 少し手が温まりかけて、それを怖がるようにヴカは手を引っ込めた。


「なるほど」

 僕はその態度を見て小さな確信を得た。


 ならず者の巡回が減り先に進むことになった。          

 僕はヴカに肩をかして歩き始める。

 彼の酒とタバコ臭い息に咽せそうになった。


 彼は自分が生きていることに負い目を感じているようだ。

 酒とタバコは自分に対する罰のようなものなんだろう。

 

「そうやって善人ぶるのは疲れるんじゃないか?」

 ヴカは僕を馬鹿にするように言った。


「貴方みたいに追い詰められた人はほっとけないんですよ、昔の自分を見てるみたいで」


「なら偽善者だな、礼は言わないぞ」


「そう言うなら少しは感謝してるってことですよね」


「チッ、ムカつくガキだ」


 ヴカは不愉快そうに吐き捨てると隠し持っていた酒を飲む。


 僕は笑いながら、彼の冷たい体が少しでも温まるように体を寄せながら歩いた。

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