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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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765回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 546:夢の残影

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 彼女の妊娠がわかった時は俺たち二人とも動揺した。

 だけどステファニーはすぐに落ち着いて、幸せそうな顔で喜んでくれた。


 身重の彼女には安全な場所にいて欲しかったが、彼女は俺の相棒は自分しか務まらないと譲らず。


 俺の故郷を守る任務の後、二人で退役する約束で船を出した。


 爆発が島を飲み込み友軍の攻撃を受け、動揺した俺のミスでステファニーが重傷を負ってしまった後も、彼女はパニックになりそうな俺を励ましてくれた。


「私なら大丈夫、二人で幸せになるんだから負けていられないわ。だから集中して、生き残りましょう」


 力強くそう言う彼女と共に罪をなすりつけられ追われる最中ブロックから通信が入り、彼の助言で包囲網の穴を抜けて脱出。


 その先でブロックを拾い、昔依頼を受けたことのあるブレーメン海賊団に転がり込んだ。


 紅蓮地獄に乗り込みようやく一安心した頃、ステファニーは満足げに微笑みながら冷たくなっていた。


 それ以降船に乗ると手が震えて使い物にならず、そんな自分が嫌でやけ酒を飲んで自己嫌悪を繰り返す。


 あの日から彼女の夢ばかり見る。


 無事に二人で傭兵を引退して、小さな酒場を切り盛りしながら、そこには子供と幸せそうなステファニーがいる。


 彼女に触れるといつも氷のように冷たくて、そうしていつも目が覚める。


 目を開けるとまだ夜の明けない闇の中にいた。

 眠りながら流した涙が頬に冷たい。


 俺は涙を拭い酒を一瓶飲み干し、また眠ろうと横になるが眠れない。


 船室の窓から夜空が見える。

 綺麗な星が好きだった彼女の幻影が現れ、俺に優しく微笑む。


 未来への期待に胸を膨らませ夜空を見ていたあの時のまま、綺麗で優しい彼女の笑顔。

 手を伸ばせば霞のように消えるそれは俺に痛みしか与えてくれない。


「許してくれステフ、お前の記憶が俺には……」


 俺は込み上げてきた感情を抑え切れず声を殺して泣いた。


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