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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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758回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 540:真夜中の決闘

「ありがとうクガイ」


「迎え酒いるか?」

 そう言いながら彼は酒樽を床におろし、蓋を拳で叩き割った。


「お水にしとくよ」

 そうかえすと彼は笑いながらジョッキで木樽の中の水を掬い僕に手渡してくれた。


 彼は酒樽から酒を掬いぐびぐび飲んでいる、ウワバミってやつだ。

 巨漢のシャチ獣人が豪快に酒を飲む姿はまさに海賊といった感じで絵になるなと思った。

 

「クガイはどうして僕らに声をかけたの?」


「最初は蒼穹氷晶のことを調べて回ってるやつの話を聞いて興味が出たからなんだが」

 そう言うと彼は僕を見てニヤリと笑った。


「お前を見たら確信したんだ。こいつがいればこの海はもっと面白くなる、絶対に海賊にするべき男だってな」


「またキャプテンのいい加減な勘ですか」

 いつの間にか近くにいたミサゴが言う。


「あながち間違ってなかったろ?」


「この間港で勘頼りにポーカーして、船まで取られそうになったのはどこのどなたでしたっけ」


「それとこれたぁ別だよぅ、男には受けて立たなきゃならねえ勝負ってもんがあんだ」


「はいはい、そういうことにしときますよ」


「ったく可愛げのない奴め」


 不貞腐れるクガイを横目にミサゴは僕をチラリと見ると柔らかい目をした。


「まぁ、彼は例外かも知れませんがね」


 僕はミサゴの言葉が嬉しくて笑顔になった。

 でも不意に立ちくらみがして、倒れそうになった僕をクガイが抱き止めてくれた。


「はは、ちょっと飲みすぎたかも」


 というのは嘘だ、今日も大罪魔法で無茶したせいらしい。

 内臓がひっくり返り火に炙られているような痛みがある。


「部屋まで運んでやるよ」

 クガイはそう言って僕をおぶってくれた。


「あいつには勘付かれたくないんだろ?」

 彼は歩きながら小さい声で僕に言った。


「うん、せっかくいい雰囲気なのに水を刺したくないから」

 僕はそう言って彼にしっかり掴まると、その大きな背中に安心感を覚えた。

 それはきっと彼がこれまでいろんなものを守ってきた証拠だ。


「この背中でクガイもいろんなものを背負ってきたんだね」


「なんだよいきなり。まぁいろいろあったけどな、大した事はしてねえよ」

 照れくさそうにいうと彼は僕の部屋に入り、僕をベッドに降ろした。


 お礼を言おうとしたらクガイが僕に覆い被さってきた。


「あれ、これってどういう……」

 彼は困惑する僕に軽く頬擦りすると、小さく出した舌先で僕の頬を舐めた。


「お前を俺の物にしに来たって言ったら、どうする?」


 僕は指を鳴らし、手の動きを確認する。

 技のキレはまずまずといったところ、クガイを落とせるかどうかはシャチ獣人にどれくらい僕のマッサージが通じるかによる。


「僕のテクニック結構すごいよ、大丈夫?」

 一か八か、でも蕩けたクガイが見られるかもしれないなら悪くない賭けだ。

 思わず小さく笑みがこぼれる。


「その表情、遠慮は必要なさそうだな」


「勝負してみようか」


 僕の言葉を皮切りにクガイは服を放り投げ僕を抱きしめる。

 僕はすかさず彼の脇腹から揉み始めた。


 クガイは平気な顔をしているが手の力が抜ける。

 拘束が緩んだ隙に腕を回して腰背中を揉みほぐす。


「ふおっお……なんだぁ!?これはぁ……?」


 クガイは耐えているが段々蕩けた顔をする。


 僕は彼を逆に押し倒してお腹から胸、首元から頭をマッサージで攻めたてまわす。

 

「お、ぉお……おっ、おっ」


 クガイは全身をビクビクと弛緩させ荒い息をついて顔を紅潮させた。

 これなら落とせる!


「良い顔してるよクガイ」


 僕は彼の体の敏感なところをなぞり、腰、太ももから尻尾を揉み上げる。


「はぁ……ッ!はっ、そこはダメだ……ぁッ」


 クガイは荒い息で蕩けた顔をして僕に身を委ね始めた。


「いい子いい子、忘れられないくらい気持ち良くしてあげるからね」


 僕が極限のマッサージテクニックを今解き放たんとした時、クガイは「こなくそぉ!!」と叫んで正気に戻り、僕の両腕を掴んでベッドに押し倒した。


「危ないとこだったが、もう手も足もでねぇよな」


「力づくはずるくない?」


「海賊相手に何言ってんだ」


 彼は僕の首元の匂いを嗅ぎ、頬を舐めるとキスをした。

 僕のマッサージでしっかり出来上がってしまいもう歯止めが効かなさそうだ。


 どうしたものかと考えていると、突然クガイが天井に磔になった。


「なんだ?」

 クガイは天井に強かに頭を打ち、あっけに取られて目を白黒させている。


「俺の雄馬に何やってんだ!」

 ベイルが部屋の入り口に立っていた。


 彼が絶技で加速度を変えてクガイを天井に磔にしたらしい。

 ベイルは般若顔でクガイを睨み牙を剥き出しに唸り声を上げている。

 ハイエナの威嚇顔は牙が凄くて迫力がありすぎる。


「べ、ベイルこれには訳があって」


 ベイルは僕に黙れと言わんばかりに爛々と燃える怒りの眼を向けてきた。


「ヒィッ」


「おー怖い」

 クガイは笑いながらそう言うと、腰の剣の鯉口を切る。

 ベイルの背中の毛皮が凍りつき、彼の「ヒャッ!?」という声と共に絶技が止まった。


 クガイは床に着地すると僕の頭をくしゃっと撫でる。


「ハハッたく、お前をからかうと面白えことばかり起きる。俺ぁますますお前が欲しくなったぜ」


 ベイルは僕にしがみついてクガイを跳ね除けると牙を剥いて唸る。


「あんまふざけてっと怪我するぞぅ」


「肝に銘じとくよ」

 クガイは心底楽しげにそういうと部屋から出ていった。


「八方美人も程々にしてくれよぉ雄馬ぁ」

 ベイルはそう言いながら僕の全身を舐めまわし、自身の体を擦り付け始めた。

 マーキングしてるらしい、僕は苦笑いした。


「ごめんねベイル、助けてくれてありがとう」


 頭を撫でるとベイルは上目遣いにホッとしたような顔をして、返事がわりに僕の顔を舐めた。

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