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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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756回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 539:交流試合

 鮫仮面の海兵やガフールさんが浮かない顔なので、僕はみんなに料理を振る舞いがてらじゃんじゃんお酒を持ってきてみんなでべろべろに酔っ払った。


 以前から何か遠慮して本音を言えてない雰囲気だったから、これで本音が聞けるかと思ったら相撲が始まった。


「なんで?」


「相撲はシラクスの国技でな、海軍では船上作業のための体幹作りの訓練と交流のためによくやっているんだ」

 ガフールさんは酒を飲みながらそう言った。


「仮面は外さないの?」


「これはまぁ、俺たちなりのケジメみたいなもんだ」


「大将、アンタもひと勝負どうだい」

 海兵が僕を誘った。


「うん、やろう!」


「そうこなくっちゃ」

 みんなが円形に広がり場所を作り、僕は海兵の一人と向かい合う。


 相手が突進してきた。

 相撲の基本はすり足だ、地面に足の裏全体を常につけてどんな状態からでも最大の踏ん張りで対応する。


 酒が入っているのもあり普通に走ってきた相手の懐にすり足で入り、腰のあたりを掴んで横に引き込んで転ばせる。


 海兵達がどよめき、みんな上着を脱ぎ半裸になった。

 空気が変わった、少し気をつけないと怪我をするかも。


 次は僕より大きな体格差のある相手。

 さらに今度はすり足を使った突進がきた、体重差もあり崩すのは難しそうだ。

 僕は相手の張り手を交わし体を深く沈めて、膝に向かいタックルする様に滑り込み足を取る。

 重心移動を利用して足を持ち上げて相手の姿勢を崩して放り投げた。


「おおーっ」と海兵達の驚きの声が上がる。


「やるな」

 そう言ってガフールさんが次の対戦相手として僕の前に立った。


 僕とガフールさんは互いの目を見つめ合い、腰を落とし地面に拳をつける。

 ガフールさんの仮面の下の目がギラリと光り、それを合図に僕たちはぶつかり合った。


 張り手の応酬。

 体重のかかった張り手だ、丸太の棒で突かれている感覚に近い。

 逸らそうとしてもガフールさんの強固な体幹と無駄のない体重移動により繰り出されるそれをいなしきれない。


 僕は体を斜めに逸らしながら張り手の威力をずらし、ガフールさんの懐に迫る。


 彼はすかさず体を横にずらし、迫ってきた僕の首に手のひらを突き入れ吹き飛ばしてきた。


 僕はバク宙で着地してすかさず攻め込む。

 気管のダメージで呼吸がしにくい、頭への衝撃もあって少しくらくらするが、そこは歯を食いしばり気合いでカバーする。


 ガフールさんが僕に向かいぶちかましを仕掛けてきた。

 僕は左に行くとフェイントをかけ即座に右に移動する。

 ガフールさんの突進にわずかな隙ができた。


 僕はすかさず彼の横に滑り込み、彼の腰を後ろから掴み足をかけて投げ飛ばす。

 ガフールさんは海兵の壁ごと吹き飛び、積んであった木樽を粉砕して壁にぶつかった。


 しまった、気迫に押されてやりすぎた。

 僕は急いで彼に駆け寄る。


「すみません、大丈夫ですか?」


「見事な上手投げだ」

 彼は海兵の肩を借りて起き上がりながらにこやかに言った。


「土俵があったら喉輪で場外負けでしたよ」


 僕がそういうと彼は手を差し出し、僕はその手をしっかり握り握手を交わした。

 海兵達が大きな声をあげて盛り上がる、交流はどうやらうまく行ったみたいだ。


 ガフールさんが僕を抱きしめ耳打ちする。

「俺たちにはまだ少し迷いがあってな、気を使わせてすまない」


「巻き込んだ責任がありますから、できれば頼ってくれると嬉しいです」

 彼は僕の顔を優しい目で見ると僕の頭をくしゃっとなでた。


「まったく君は見た目にそぐわない事を言う」


 それから酒盛りが盛り上がって、途中で僕は意識をなくした。


 再び目が覚めるとふんどし姿のガフールさんや海兵達に抱きしめられていた。

 みんな眠っているようだが謎すぎる状態だ。


「なんにせよ嫌われてるわけじゃなくて良かったかな」


 それはそうとみんな力が強くて抜け出せないんだけど……。

 さながら汗だくの屈強な男達に抱きしめられた肉の檻だ。


 抜け出そうと困っているとクガイが僕の服の襟を掴んでひょいと引き出してくれた。


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