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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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750回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 535:闇を駆ける疾風

挿絵(By みてみん)


「ようやく来たか、相変わらずトロくせえ奴だなお前は」

 ジェドはニヤニヤしながらミサゴに言う。


「用があるのはそこの鳥男だけだ、死にたくなかったらお前は失せな」


「ねぇミサゴ、あいつ感じ悪くない?」


「仲間内でも嫌われてたからな」


「人が話してる時に陰口とはいい度胸だな」

 ジェドはイライラしながら言うと、指を椅子にコツコツと叩きつけて僕らの背後の通路に鉄柵を降ろして退路を塞いだ。


「やれやれ、役に立たないお前らを俺のオブジェクトの生贄に使うつもりが、船員達に勝手に逃がされた時はどうしたもんかと思ったがよぉ」


 その言葉を聞きミサゴは目を丸くした。


 彼の話では船員達に足手纏いとして放り出されたはずだ。

 でも船員達がミサゴを助けようとしたならいろいろと辻褄は合う。

 ミサゴを導いたという黒い人影、もしかするとそれは彼を逃した船員の一人だったとしたら。


「お前なら来ると思ってたぜミサゴ」


 ニヤリと笑うジェド。


 ジェドは水晶玉を取り出してこちらに見せた。

 水晶玉の中には巨大な目玉が一つ、それが玉の中をギョロリと動きミサゴを見据える。


「水没者の眼……」

 そう呟くとミサゴは憤怒の形相でジェドを睨みつけた。


 水晶玉の目玉が赤黒く鈍い光を放つと、ジェドの周囲の何十人分もの髑髏が赤黒く明滅しその存在を露わにする。


「こいつは仲間を生贄にしなきゃ発動できないオブジェクトでね。船員どもを生贄に宝輪のところまでは辿り着いたが、外に出るためにあと一人分生贄が足りなかったんだ」


「ゴッブ……ッ」

 ミサゴが膝をつき口から大量の水を止め度なく吐き出し始めた。

 彼は水で呼吸ができず虚ろな目をして痙攣し始めた。


「お前の分も入れればここから無事に出られる」

 ジェドは水晶玉を大切そうに眺めながら言った。

 僕は近くにあった石を水晶玉に向けて投げる。


 眼球が石を見て瞬時に消し去ってしまった。

 しかしその影響かミサゴの口から溢れていた水は止まる。


「おいおい何してくれるんだよこのクズは」

 ジェドは苦々しい顔をすると、指輪をかざす。

 石座が付いているのに何も宝石のない奇妙な指輪、しかし石座に紫電が走り、その輝きは宝石のように煌めいて、周囲に無数の闇霊の気配が集まってきた。


 おそらくアレが宝輪、能力は霊魂の操作といったところだろうか。

 セントエルモの火のような発光現象だ。


 風を裂きながら飛来する影コウモリを回避するが、360度の無数のオールレンジ攻撃、かわしきれず皮を裂かれ肉を食いちぎられていく。


「ぐっは……はぁはぁ」

 ミサゴが目を覚ましたがまだグッタリしている、僕がなんとかしなくちゃ。


「ミサゴ、そこ動かないでね、丸焦げにしちゃうかも知れないから」


 僕はポーチから油を取り出し周囲に撒き、それに松明で火をつけた。

 ツタを使った分銅鎖状の松明を大量に生み出し地面の火を使い着火、その無数のファイヤークラッカーを縦横無尽に振り回し影コウモリを撃退していく。


 合間合間に水晶玉に石を蹴り飛ばすと、徐々にジェドの顔色が悪くなる。

 この様子だと石を消すのに今まで蓄積した力を消費するみたいだ、削り切れば勝機はある。


「嫌がらせみたいに石飛ばしやがってクソが!」


 追い詰められイラついたジェドが影人間の大群も呼び寄せ攻勢を増やす。


 ファイヤークラッカーの火力では影人間を怯ませる程度しかできない。

 かといって影コウモリも数が減らないから攻撃方法も変えられない。

 次第に周囲に影人間が増え、ファイヤークラッカーでの牽制が押され始める。


「これはちょっと不味いかも」

 苦笑いで呟くと、一陣の疾風が駆け抜けた。


 炎の刃を持つ疾風はあっという間に周囲の影人間を斬りふせる。

 それはミサゴの目にも止まらぬ斬撃だった。

 彼が燃える油を剣に纏わせ影人間を斬り裂いたのだ。


「ザコがイキがるんじゃあねえ!!」


 ジェドが影狼も増やし攻勢を強める。

 

 ミサゴは翼に隠した羽と同じ色の左右五本の刃に油を纏わせ着火し乱舞で撃退、しかもそれをファイヤークラッカーを掻い潜りながら行っている。


「やるじゃん」


 彼は横目に僕を見るとニヤリと笑う、そしてジェドを見ると「舐めるな」と言い放った。


 ジェドは頭に血管を浮かべ血眼で顔面蒼白というすごい表情でワナワナと震え出す。


「バカなバカなバカなバカな!貴様のような役立たずにどうして俺が追い詰められる」


 彼は水晶玉を放り投げ、指輪をはめた拳を握り締め「もっと力をよこせ!アイツらを殺す力を俺に!」と叫ぶ。


 影霊が大量に集まりだし、もはや濁流の様になり始めた。

 しかしそれと同時にジェドの様子にも変化が現れる。


 「グカッカッギギッギ……」

 ジェドは白目を剥き、口から泡を吹いて全身を激しく痙攣させている。


 ジェドはセントエルモの火の力を使いすぎて暴走させてしまったらしい。

 地面の砂が蟻地獄状になり、ジェドの体を突き破りながら砂の中から巨大な蟻地獄が現れた。


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