75回目 ディストピア 果ての世界
クリーヴは都市にたどり着くやいなや黒服の男たちに取り押さえられ連行された。
彼らはその都市の秘密警察だった。
クリーヴの仕事を阻むために男達は彼を様々な方法で脅した。
お前の仲間を殺すと脅してくる相手に平然とかまわないと答えるクリーヴ。
お前の故郷を核で攻撃すると脅してくる相手に平然とどうぞと答えるクリーヴ。
殺されたくなければ仕事をやめろという男に、それは個人的に困るから応じたいところだけれど、自分がいなくなれば代わりの誰かが仕事を果たすだけだから自分には止められないというクリーヴ。
僕たちは一人にして全なるものだから、僕らを止めるには僕ら全てを捕まえる必要があると。
クリーヴ達は移動する国家だ、旅人にして一つの国家の一部、国民すべてが旅人として放浪していて、その実態は幽霊国家と呼ばれている。
国民一人一人が国家であり、宿主として丁度良さそうな国を見つけるとそこを仲間に教え、または自らが滞在しその国家の内部に自分たちが侵食して自らの国家として乗っ取っていく。
彼らの正体を恐れる人々をしり目にクリーヴはこんなディストピアしかない世界で何を守るんだろうと疑問を覚える。
クリーヴは路上で花を売っている少女から一輪花を買うが、彼女の体調が悪くなり家へと連れていく。
そこで娘の母親と一緒に彼女を看病し、生活を共にしていくうちにまるで家族のような関係になっていった。
クリーヴは気づく、国の最小単位はきっとこの関係なんだと。
守る価値のあるものはこの世界の果てにもまだあるのだと。
そしてクリーヴは一つの国家の首相となった。
家族という温かく小さな国で。




